今高研究室 Imataka Lab/xR

獨協医科大学医学部小児科学

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2021.07.08

インターネットとコロナウイルスは国家を弱体化した

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 1990年、米軍が開発した情報通信技術を米国地震システム研究センターのリック・アダムスが応用して世界初のネットプロバイダーAlterNetを立ち上げて以降、インターネットは地球上から距離と時間の壁という制約を矢庭に取り払った。世界中の大量の情報に民間人のアクセスが可能になると、国家の線引きを越えてグローバルに経済活動を行う多国籍企業が出現した。やがて企業は自らのネットワークを構築し、利益を求めて世界を席巻するようになる。その代表がGoogle・Apple・Facebook・Amazonの世界4大IT企業、即ちGAFAsである。今や巨大IT企業の経済力は強大で、中小国の国家予算を上回る。国家と企業の経済規模が逆転した関係では、一国家だけで多国籍企業をコントロールすることは出来なくなり、結果としてインターネットの普及とグローバル化は既存の国家の概念を弱体化させる現象を引き起こした。

 加えてインターネットの普及は経済活動のみならず思想やイデオロギーの普及にも利用された。それがアメリカ同時多発テロでありイスラム国の出現である。アメリカ同時多発テロはイスラム過激派のテロリスト集団「アルカイダ」が起こしたと言われ、殉職されたフリージャーナリスト後藤健二氏の映像しかり、その犯行声明はインターネットを介して瞬く間に世界へ広がった。またイスラム国が国教とするイスラム教もYouTubeで拡散され、世界各国から戦闘員を集める導引となった。もし国家の規制がインターネット規制よりも強ければ、このような事態は避けられたはずである。今や誰もが国家の弱点や不祥事をインターネット情報を通して知ることができる。その教訓としてマルクス・レーニン主義を基盤とする社会主義国家は、厳しくインターネットを規制し、言論統制に乗り出している。2014年に香港で起きたデモ活動「雨傘運動」にしても、中国政府によるインターネット規制と2019年の逃亡犯条例にみる厳しい言論弾圧により、1997年から23年間続いた香港民主主義の1国2制度は屈した。世界金融の中心であった香港を拠点とした多国籍企業は今や挙って拠点を香港国外に移転している。もっとも日本のデジタル庁発足にしても大義名分はIT技術の有効活用であるが、21条「表現の自由」の原則から見れば抵触する面がある。然りとて資本主義の国々が今さら国家のレベルを超えつつある巨大企業を統制することは全くもって不可能であり、多国籍に展開した巨大企業の税収収益を複数の国家間でどう分配するのかままならない。かたや主要国政府すら投資家の温床となるタックス・ヘイブンを促す国家や地域への租税回避と金融口座の凍結に手を焼いているのが現実である。

 さて現在の国家と企業の関係性はいかなる方向性にあるのか。経済的にも思想的にも弱体化した国家はある程度の権限を維持しながらも、一つ一つの事業を民間に委譲し始めている。「民間企業の活用」とは名ばかりのアウトソーシングで、その実態は国家の力で解決することが出来ない難題を抱える産業や、リスクを回避したい挑戦的な萌芽分野の新らたなイノベーション事業に対して、国は債権を発行してまで融資という名を称して巨大企業や一部の大学や研究機関への投資をしているのである。2020年から長引くコロナウイルス問題にしても、世界中でこの問題を解決できた国家は未だ一つもない。米中露そしてEUといえども、国家は未曾有の問題を解決する能力と機能を持ち合わせていない。G7、G20、国連でも問題解決の議論が重ねられているが、利害関係で機能崩壊した多国間の枠組みには事態を解決する道筋すら見えていないのだろう。

 インターネットと同じでコロナウイルスには国境線がない。国境線を持たない相手に線で隔てられた国家が立ち向かうには、そもそも端から無理がある。もしも未来を予知するならば、コロナ後の新しい時代に人類の新たな問題を解決していくのは、国境を自由に乗り越えてグローバルに展開する多国籍企業、潤沢な資金を提供できる投資家、発想にボーダーの無い稀代な研究者、言論弾圧を恐れない勇気ある活動家、カリスマ的な芸術家、そしていつかは未来の大人となる無限の可能性を秘めた世界中の子ども達であろう。

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獨協医科大学医学部小児科学
今高研究室は「医療を必要とする子どもの最善の利益」を実現する持続可能な社会(Sustainable Developmental Goals; SDGs)の構築を目指し、小児神経学と医療倫理哲学をベースとした療育の有り方について研究をしています。
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