山口潤一郎研究室

早稲田大学理工学術院先進理工学部応用化学科

インタビュー
2019.12.08

研究室が情報発信する意義とは?|早稲田大学山口潤一郎教授インタビュー

国内最大の化学ポータルサイト「ケムステ」の運営者でもある、早稲田大学先進理工学部応用化学科の山口潤一郎教授にお話を伺ってきました。


山口教授は自身の研究室ホームページでも学生を巻き込み積極的に発信を行うなど、国内でもトップレベルの情報発信を行う研究者です。


なぜ研究者がWeb上で情報発信を行い続けるのか?


その”想い”をインタビューしてきました。


化学ポータルサイト「ケムステ」をなぜ運営するか?


ーーそもそもなぜ化学ポータルサイトを立ち上げようと思ったのでしょうか?


山口 元々は僕が学生の時に、化学を勉強するっていうところから初めたんですよ。化学と言っても色々あるので、それぞれの面白いところを紹介したり、最新の研究を紹介するっていうWebサイトを作りたくて。


化学の情報サイトってイメージですね。化学ってすごいマニアックなんで、当時そういうホームページがなかったんです。


最初は自分一人でボランティアで、教育って意味で始めて。一人加わって、何人かボランティアベースがあって。大体7、8年くらい前から執筆料は出せるようになりましたね。


今は、立場を飛び越えて行けるっていうところにもモチベーションがありますね。大学って結構それなりに上下関係がある世界なので。例えば学会とか、化学は比較的トップダウン型で色々と面倒くさいんですね。


インターネットの中ではフラットだし、メディアとして通用するので、学会とか会社が依頼してくるんですよ。そうなると自分の立場を超えたいろんな動きができるし、繋がりができるんです。


ーー研究との両立はできたのでしょうか?


山口 それをやってる暇があったら勉強やるって言うのが一般的な話ですよね。でもそういう風に言わせないほどの研究はしていたつもりなので。それは反骨精神と言うか。そっちをやっていながら、「私は研究をちゃんとやっています」っていうのを言いたいがために結構一生懸命やっていた。もちろん研究が好きでやってるっていうのはあるんですけど。化学じゃなかったら続けられないですし、お金を考えたら間違いなく続けられないですね。


大学にいるので、やっぱり教育に繋がるものがあるから続けられてた。例えば、研究室で学生に直接指導するのも教育ですし、大学で200人ぐらいに講義するのも教育ですよね。そう考えると、Web上で科学に関する知識を公開して、最新化学から一般的な化学まで、化学面白いんだよって言うことを紹介していくのも教育。だから方向は繋がっているかなっていう感じでしょうか。



メンバー全員で運営する研究室のホームページ

ーー研究室のホームページもかなりの頻度で更新されていますよね。それは化学ポータルサイト運営のご経験から、発信することの意義を感じているからでしょうか?


山口 色んな意味がありますね。自分に対しての直接的な繋がりで考えると、自分と一緒に研究したい人をいかに連れてくるか。公的な意味でいうと、色んな人に研究室の雰囲気を感じ取ってほしい


自分たちの情報を晒すと似たような人たちが入ってくる

山口 研究室って日本の場合は学科の学生が選びますよね。僕のいる学科の場合は人数が決まっているんですよ。つまり第一志望じゃなくても決まった人数が入ってくる。


そういう状況もあって、自分と一緒に研究したい人ってのをいかに連れてくるかっていうところですね。情報を発信していてすごく楽しそうに見えるっていうのは、僕はそういう人がいいんです。純粋に楽しい人。自分たちの情報をある程度晒すと、そういう人が来るじゃないですか。


例えば、お酒を飲んでるページとかがあると、この研究室は飲み会が激しそうだからやめておこうとか。だから色々行事をやってたりすると、そういうの面白そうだなって思う人が来るんですよね。


未来の研究者のための情報発信

ーー公的な面というのは具体的にどのようなことでしょうか?


山口 やっぱり研究室って、一般的にはクローズドな世界なんですよ。大学院生って非常にマイノリティですよね。特に博士課程の学生なんて、何万人に一人くらいしかいない。


その人たちが何か言うだけで”ネタ”なんですね。つまり研究者を目指している人にとっては、ものすごくいい情報なんですよ。だからその時の気持ちをちゃんと外に出して、学生に書いてもらってる。そうすると、誰か化学が好きな人=ポテンシャル化学研究者が見て、やっぱり化学やってみたいなって思うんじゃないかなと思って。


研究室のメンバー全員が記事を書く

ーー担当を決めて順番に更新していくような感じなのでしょうか?


山口 全員が担当なんですよ。1年に3つ記事を書きなさい、と。何か書けますよね。例えば、飲み会があっただとか、自分の趣味のことだとか。


ちゃんと自分で発信できるような人になってほしいので。内部の学生向きには、そういう教育的な面もありますね。



ブログ記事を書くことは大学の「単位」と同じくらい重要

ーー記事を書いていて実際に良かったことはありますか?


山口 例えば学会とかに行くと、素晴らしい研究結果を持っている学生であればいいんですけど、4年生や修士1年はあまり良い研究結果を持っていない。ただ、ホームページで発信していると他の同業者の研究者もちゃんと見てるんですね。そうすると、あそこに載ってた人って認識されて、すごくプラスになるんですよ。


認識されるっていうのは、そういうコミュニティにすごく入りやすい。学生が一番喜んでいるのはそこですね。「前その記事見たよ」とか、「飲み会でよく寝てる子だね」とか。


学生は自分でアピールして、自分で色んな人との繋がりを獲得している。そういった意味で、色んな良い意味があるので研究室のホームページを皆でやっているっていう感じですかね。


ーーそれはすごく価値のあることですね。しかし実際、研究室の学生に書いてもらうのは大変じゃないですか?


山口 僕の研究室のホームページのとしては、記事を書くことは勉強会とかで作る資料と同じぐらいのレベルの位置に置いてるんですよ。絶対得になるからその3つは書いてねってお願いしてる。この研究室にいる限りは、選択肢としてそれをやらないっていうのはないんですね。授業の単位と同じようなイメージです。研究室のガイダンスのときに先輩からブログの書き方を学ぶんです。だから研究の一部みたいになっているんですね。


先輩は自分たちの成功体験を学生に伝えてくれるんですよ。僕からだけじゃなくて、先輩たちから「ブログを書いたほうが絶対に得だから」っていうのが来るので、今のところ正のスパイラルで回ってますね。


研究室の情報発信の現状


ーー皆がそのくらい価値があるって感じてもらえれば、研究室業界全体ももっと活発に情報発信が行われると思います。ただ、現状は研究室が情報発信することの意義はあまり浸透してないですよね。


山口 なかなか難しいですね。個人情報を特定されるからダメだとか、そういう情報出すのはおかしいって人は多いですよね。


ーー周りの人、特に上の人から承認されないっていうケースは多そうですね。


山口 一切承認されないですね。化学ポータルサイトの方でもそうですけど、周りの目は少し怖かったです。サイト運営に時間かける意味が分からない。それだったら研究やればいいじゃんって。「教育に関わるから」とか、結構同じようなこと言ってたんですけどね。


でも、頑張ってくださいとか、よく見てるよとか言われることも多かったですね。


ーー最後に研究室の発信の意義についてお願いします。


山口 結局、人と人との繋がりですよね。情報発信をきっかけに色々な繋がりができたのは間違いないです。それは僕だけじゃなくて、一緒にやってるスタッフもそうですし、研究室のホームページに関してもそうですね。普通4年生だとかがそこらへんの教授にいきなり声かけられる事ってないんですね。やっぱりそれはすごく大きいことなんじゃないかなと思います。


だから僕の考えとしては情報発信はした方がいいんですよ。


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早稲田大学理工学術院先進理工学部応用化学科
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