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獨協医科大学医学部小児科学

ブログ
2021.04.15

ケアをする人のケア (ヤングケアラー問題)

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 厚生労働省は2021年3月17日、大人に代わって家族の家事や介護を行うことを日常的に迫られている子どもである「ヤングケアラー」に関する初めての検討会を開催した。これを受けて4月12日、厚労省と文科省は合同で「国内におけるヤングケアラーの実態調査研究」を報告している。約5%の中高生 (中学2年生の5.7%、高校2年生の4.1%) が疾患を持つ高齢の祖父母の介護や、発達障害がある兄弟姉妹の世話、また家庭を支えるためのアルバイト等を理由に一日に平均4時間を費やしており、同年齢の子どもに比べて圧倒的に自分のための時間が確保できていない。介護士やヘルパーを利用する福祉制度が十分認識されないまま「これは家族の問題である…」として他者に相談できずにケアラーが無理をしている実態もある。

 また日本社会特有の問題として、少子高齢化や核家族が増えたことにより介護者を家族内で分担できない、さらに平均寿命が延びても健康寿命と約10年の開きがある、これらもケアラー増加の一因であろう。加えて父子家庭や母子家庭などのひとり親世帯ではヤングケアラーの比率が特に高い。つまり行き着くところこの問題は子どもの貧困問題と絡めて議論する必要がありそうだ。


 ヤングケアラー問題は、イギリスやオーストラリアでは2000年台前半から国を挙げた政策が進んでいる。イギリスではトニー・ブレア政権時代の2003年4月に起きたヴィクトリア・クリンビー虐待事件に対する子ども策として ”Every child matters ーどの子どもも大切" 政策が施行され、子どもの貧困の撲滅とともにヤングケアラーについても地域社会の様々なチャンネルをコーディネーションするコミュニティーケア方式の支援が実践されてきた。イギリスの成功例を手本として、厚生労働省は「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」を発足する構想を発表した。このヤングケアラー問題、イギリスでは毎年3月16日は「ヤングケアラー・デイ」と称され、社会への啓発活動や介護福祉の有り方が論じられているが、日本ではまだ議論が始まったばかりである。この度の報告で中高生の20人に1人がケアラーである現実が浮き彫りになったことを契機に「ケアをする人のケア」を念頭に、子どもの貧困と福祉に対する政策が発展することを期待したい。

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