酵素学研究室
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻
インタビュー
2020.05.28
きっかけは「ジャケ買い」!酵素の魅力とは?|東京大学伏信進矢教授インタビュー【後編】
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻の伏信進矢教授インタビューの後編です。
前編では主に酵素学の内容、研究のスタンスについてお伝えしました。
後編では、研究に興味を持ったきっかけや研究室のことなどに焦点を当てお話を伺いました。
運命を変えるパンフレットとの出会い
酵素学に興味を持ったきっかけはなんでしょうか?
伏信
進振りのときに、工学部か理学部か……と思っていたんですけど、同級生に「理2なのに農学部いかないの?」と言われまして。それでたまたま見たパンフレットの表紙に、コンピュータグラフィックスで描かれた酵素の複雑な分子モデルが載っていたんです。
当時はよく分かってないんですけど、単純に綺麗だなと思って興味を持ったのがきっかけですね。
ジャケ買いみたいな感じですね!
伏信
コンピュータにも興味はあったんですけど、周りと比べると無理だなと思って。それで生物系にしてみるかと。あと東大の農学部の農芸化学科って、星新一が出たところっていうのもあるんですけど。
その後、研究室に入って酵素の研究をされたんですか?
伏信
そうですね。たまたまですけど、研究室の先輩がその表紙の酵素の立体構造を解いた人で。
なんと!
伏信
それで最初にビフィズス菌の酵素の研究を始めたんです。その後、他のいろんな糖質関連酵素をやっていくんですけど、結局ビフィズス菌の酵素に戻ってきたという感じですね。
実際に研究されてみて、どのようなところが面白いと感じたのでしょうか?
伏信
私は構造解析なんで形を明らかにするんですが、酵素は形が全然違うんです。まず見た目が綺麗ですよね。
伏信
あとは、やっぱり酵素といえば機能ですね。形を明らかにすることによって、どういう触媒反応が起こっているかというのが手に取るように分かるんです。
気づいたら酵素の複雑な立体構造に魅了されていました。
自分の興味を突き詰めることが大事
研究室の学生にはどのような指導方針で教えていらっしゃるんですか?
伏信
うちの研究室は、チーム制ではなくて、1人1テーマなんですね。手法は似ている場合があるので共有したりしますが、各々自分のテーマがあるので、それで上手くいったら学会発表もできるし、論文では第一著者にもなれます。
そうなんですね!
伏信
研究室にいて実験をする時間も含め、基本的には自主性に委ねていますね。もう大学生なので、学生の興味が合わなかったりしても、他の分野で伸ばせば良いんじゃないかな、と。
その中でも、やはり成果を残している学生さんがいるのがすごいですね!
伏信
こうやって自主性に任せていると、「甘い」と言われてしまうこともあるんです(笑)。ただ、逆に本当にすごく伸びる学生もいますね。
自分の興味や好奇心が研究を後押しするんですね!
伏信
自分も、酵素のダイバーシティを軸に研究をしていますが、もともと「これをやるべきだ」と思って始めたわけじゃないんですよね。これは、自分が興味のあることとか、面白いと思うことを突き詰めていった結果たどり着いたところなんです。
研究の道は最初から決まっているわけではなく、自分の興味に導かれて決まっていくものということですね。
伏信
そうですね。もちろんちょっと嫌なこととかもやった方がいい場合もあるんですけどね。だから若い人にメッセージを送るとすれば、「目の前のもの頑張るしかない」ということですね。
【前編】
酵素の多様性を追究する!酵素学ってどんな研究?|東京大学伏信進矢教授インタビュー【前編】