酵素学研究室

東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻

インタビュー
2020.05.25

酵素の多様性を追究する!酵素学ってどんな研究?|東京大学伏信進矢教授インタビュー【前編】

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今回は、東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻の伏信進矢教授にお話を伺いました。


伏信先生の酵素学研究室では、様々な酵素の構造や性質を明らかにする酵素学の研究が行われています。

酵素学の内容、研究のスタンス、学生の指導方針など前編後編に渡ってお送りします。


酵素学ってどんな学問?

まず、研究内容についてお聞かせください。


伏信

僕の専門は酵素学になります。
酵素って言っても、めちゃくちゃ種類があるんですけど、僕はその中でも糖質関連酵素といって、
糖質に関係している酵素を主に研究しています。


例えばどのような酵素があるんですか?


伏信

分かりやすいものだと、例えばビフィズス菌の酵素になります。ビフィズス菌というのは、腸内細菌の一つですね。


ビフィズス菌は、母乳に多く含まれているオリゴ糖を分解します。その分解を助けている酵素に最近は着目していますね。


酵素は分解を助けるんですね。


伏信

そこから派生した研究もやっています。


赤ちゃんは母乳を飲むので、腸の中がビフィズス菌だらけなんです。そして離乳期を迎えると、母乳のオリゴ糖だけでなく、食品からも糖を取るようになるので、それらを分解するために腸内細菌の種類が増えていきます。
その腸内細菌の働きを助ける酵素の研究もしています。


糖の種類に応じて得意な腸内細菌があって、それに応じて酵素も異なるというわけですね!


伏信

糖というのは、食品に含まれているものだけではありません。
木材も糖を含んでいて、それに関連してバイオテクノロジーバイオマテリアルの研究室と共同研究したりします。
また、細胞の表面にも糖があるので、医薬系にも分野が広がっていきますね。


様々な研究分野に繋がっているんですね!
「酵素の研究」では、酵素についてどんなことが分かるんですか?


伏信

僕は酵素の構造解析をしています。酵素ってたくさんあるんですけど、全部形が違うんです。
その形を、X線結晶構造解析という方法で分析しています。


あとは、酵素の機能を明らかにしています。さっき言ったように、酵素は化学反応を助ける機能があるんですけど、形を分析することで、その機能が分かるようになるんです。



酵素のダイバーシティ


本当にたくさんの種類の酵素の研究をしていらっしゃるんですね。


伏信

そうですね。僕は特に酵素のダイバーシティ(多様性)に興味があります。
酵素の中でも、糖質関連酵素に着目して研究しているのも、ダイバーシティがあるからですね。


この多様性そのものや、多様性がなぜ生まれたかなどに根源的な興味を持っています。


多様性がなぜ生まれたか?


伏信

僕らがこうして生きてるのって、ご飯を食べてそれがエネルギーになって消化されて出ていって、微生物がそれを利用して……と、その一つ一つのステップに全部酵素が関わっているんです。


これってすごいことだと思うんですよ。
酵素は普通タンパク質でできているので、アミノ酸が並んでいてその配列が生物の進化にともなってどんどん変わっていく。
これを「分子進化」って言うんですけど。


分子進化!


伏信

何らかの起源となるタンパク質があって、それがどんどん進化して少し違った構造になり、別の触媒をする酵素になるわけです。
その道筋がどうなっているか、酵素の形を見ると似ているものがあって、その起源がぼんやり分かってくるんですよ。


なるほど!いろんな酵素を見ると分かってくるんですね。



「共同研究」でいろんな酵素を研究


新しい種類の酵素を見つけたりもするんですか?


伏信

自分自身で新しい酵素を見つけるというスタイルには憧れますけど、それは非常に時間がかかりますし、その分野に精通してないと難しいと思うんですよね。


だから、僕の研究はほとんどが共同研究です。その分野の専門の人でユニークな酵素を見つけている人とぜひ一緒にやりましょうといって、一緒にメカニズムを明らかにしていっています。


新しい酵素を見つけた研究者との共同研究をたくさんしているから、色んな酵素を研究できるというわけですね!


伏信

新しい酵素を発見するような職人肌の先生に言わせると、人のふんどしで相撲をとってるみたいに思われるかもしれませんが、僕としてはそういうスタイルが好きなんですよね。
興味があるのはダイバーシティなので、1つの酵素に着目するわけではなく、多様な酵素の構造を明らかにしているんです。


僕はそういうのが好きだって知れ渡っているので、新しい酵素を発見した先生から「こういうの好きでしょ?」って言われて、「ぜひ一緒にやりましょう」と(笑)。


他の研究者の方々と繋がりができて良さそうですね!


伏信

そうですね。学会、特に国際学会に行くと、研究者との繋がりやコミュニティができたり、そこで共同研究の話が持ち上がったりするんです。


研究というと「論文を書く」というイメージが大きいですが、国際学会などへの参加も積極的にされているということですか?


伏信

もちろん論文出すのがメインですけども、国際学会に行くことも僕は大事だと思いますね。
外国ではもっと共同研究が盛んだったり、実際に論文を書いている人に会えたりもするので。


研究室の学生と国際学会に行くと、学生にとっては分野の広がりや自分の立ち位置を知る機会になるので、人がガラッと変わりますね。


おぉ!


伏信

僕はいろんな酵素を見てみたいと思ってるんですよ。


やっぱり自分で研究してみないとわからない
教科書読んでも人のやっていることだし、自分が構造を解いて反応機構を自分で考えてみると一つ一つ勉強になりますし面白いですね。



【後編】

きっかけは「ジャケ買い」!酵素の魅力とは?|東京大学伏信進矢教授インタビュー【後編】


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東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻
酵素学研究室は様々な酵素の立体構造と機能を詳しく調べています。 特に、基礎と応用の両面から興味深い酵素を選び、X線結晶構造解析、 タンパク質工学的手法、各種の分光学的・物理化学的手法などを組み合わせて、その「かたち」と「はたらき」そして「うごき」を、明らかにすべく、研究を行なっています。
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