管原研究室

弘前大学農学生命科学部

インタビュー
2020.10.08

コオロギだけじゃない!注目の昆虫食、トノサマバッタはエコなタンパク源?|弘前大学管原亮平先生インタビュー【後編】

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弘前大学農学生命科学部環境昆虫学研究室管原亮平先生のインタビュー後編です。


前編ではバッタの遺伝子上の新しい発見や大量発生の原因などについてお話を伺いました。

後編は最近取り組まれている昆虫食や現在の研究に繋がる大学時代から経験、そして研究室の運営について伺いました!


トノサマバッタを昆虫食に?

管原

ところで、最近の昆虫食の機運が盛り上がってきているのはご存じですか?


昆虫食!最近よく耳にしますね。


管原

最近、昆虫食をやっている方とトノサマバッタを昆虫食として使えないかという研究を始めました。


研究を始めるに際してプレスリリースを出したのですが、最近注目を集める分野なので多くのところで報道してもらって業界内で話題になりました。


おぉ!詳しく聞かせてください。


管原

非常に裾野が広い分野なのでAI技術など色々な分野が入ってくる余地も十分ありますね。
食品なので法整備が必要ですし、飼育する上で自動化するとなると工学系の知見が入ってくる必要があります。
社会学系の研究もあった方がいいですし、もちろん昆虫学も必要ですね。


幅広い分野の知見が必要なんですね。
先生はもう食べられたんですか?


管原

もちろん、試作品とか食べてますよ。なにか昆虫を食べたことありますか?


あまりないですね……。
味はどうなんでしょうか?


管原

日本では昔からイナゴなんかをよく食べていますよね。
結構美味しいですよ。


みんな食品と思ってないだけで、味としてはエビに近いですかね。
普通に食品として楽しめると思います。


やっぱり見た目がちょっと食べづらい気がします。


管原

見た目を言うならエビも似たようなものじゃないですか(笑)。
種的にも近いんですよ、甲殻類と昆虫って。
カニもそんなに可愛いわけじゃないでしょ?でも食べますよね。


慣れたら見た目はあまり問題じゃない。それを食品として認識するかしないかですよ。


確かに慣れが大きいのかもしれません。
どんな風に食べるんですか?


管原

基本的には火を通さなきゃいけないですね。生のままではちょっと危ないので。


素揚げしたものを流通させるのは難しいので、焼いたようなものが現実的かなという気はしますね。


今のところ、昆虫食の課題はどんなところですか?


管原

食品会社じゃないので自分で商品を作るのは難しいんですね。結局どこか協力して作ってくれるところと一緒作るしかない。


ただ昆虫というのは、やっぱり食品会社にとっては抵抗があるものなんです。


食品会社はまだ積極的なところが少ないということでしょうか?


管原

昆虫というのは工場の生産ラインに基本的に入ってはいけないものとして嫌われているものなんです。
混入したらそれが大事故になるくらい。その昆虫で食品を作るというのは皆さん大きな抵抗があるわけです。


なるほど、確かに混入するとマズいですよね……。


管原

食品会社以外のところは結構好意的に捉えてもらえるのですが、食品会社に限ってはやっぱり抵抗が強いようで……。
なかなか協力してもらえないこともよくあるので、「一緒にやりたいな」と思ってもらえるところを最近探しているんですよ。


一緒に組んで新しいものを作ったりすることができるので、そういうところを積極的に探しています!という情報発信をこの場でしたいと思います(笑)。


なるほど。ご興味のある会社はぜひこちらまで!


ちなみに、最近は昆虫食といえばコオロギという印象ですが。


管原

昆虫食というと、今はコオロギの市場という感じですね。


なぜコオロギが主流なんですか?


管原

そもそもコオロギは養殖のノウハウがあったんですね。
ペットの餌用とかで生産されたりしましたから。
バッタは草しか食べないのですが、コオロギは人工飼料も食べるので飼い易く、市場を席巻しているような感じです。


バッタも今後食用として広まりますか?


管原

それには飼料という要素が大きいような気がします。
バッタは草だけで育つので、草から作った飼料さえしっかりと開発されればいいのではないでしょうか。
そこら辺に生えている雑草がたんぱく質になるんですよ。


それは画期的ですね!


管原

誰も使っていない資源を使って、それがたんぱく質になるというのはすごく魅力的だと思うんですよね。
そういう飼料さえできれば、バッタの養殖もコオロギに負けずとも劣らない魅力的な生物になるんじゃないかなと。



バッタの研究に至る経緯


今度は、大学時代の研究についても聞かせていただけますか。


管原

大学生の時は蚕の研究室にいました。
蚕も昆虫だと思われるかもしれませんが、蚕糸学蚕糸科学といって昆虫学とはまったく別なんです。


歴史的に蚕の産業はお金を稼ぐためで、どちらかと言うと産業と結びついていた。
昆虫学は生物学という学問として、自然の中で昆虫がどういう風に生きているかといったところに関心があるんです。


蚕と昆虫では見方が違うんですね、意外です。


管原

元々私は植物が好きだったんです。
高校の時は園芸植物が好きで、ずっと一日に何時間も植物を眺めてても飽きないという感じで。


昆虫ではなく植物!


管原

大学で植物の研究をしたいなと思ってたんですが、高校の時に地元の福岡の夕方の情報番組で九州大学で蚕を飼育している特集があったんですよ。
それがなんとなくずっと心に引っ掛かっていて、「蚕の研究室があるんだ」と。


植物もいいけど蚕もすごく気になって、九州大学にある蚕の研究室に入りました。


そこではどのような研究をされてたのですか?


管原

主に分子生物学をやっている研究室で、蚕の培養細胞や遺伝子を使う研究を行っていました。
でも研究結果に全然恵まれなかったですね。


そうなんですね。


管原

一応博士まで進んだのですが全然実績がなくて。


研究の世界は厳しく競争が激しい世界。印象としては華々しい業績をもって博士号を取った人の一部が研究を生業として生きていけるような世界だったので、自分のようにやっとこさ博士号を取れたくらいでは研究の世界でやっていけるはずないと、客観的に考えてもそう思っていました。


厳しい世界ですよね……。
博士号を取られた後はどうされたんですか?


管原

一旦民間企業に就職してました。
その後色々あって、また研究の世界に戻ってきました。


筑波の農業生物資源研究所の昆虫の研究所に拾ってもらったんです。


昆虫の研究所!


管原

建物の中は昆虫のプロフェッショナルばっかりなんですよね。


私は蚕の出身だったので昆虫のことはなにもわからなかったんですけど、すごく優秀で老練な研究者が多く、若者を盛り上げていきたいという機運があって。すごく協力的でいろいろ勉強させてもらいました。


おかげでようやく研究の世界で生きていけるための実績を沢山上げることができて、今に至るという感じです。


紆余曲折あったのですね。


管原

多くの人がそうだと思うんですけど、苦労して堪えないといけない時期があって、その時期をなんとか乗り越えて研究者にようやくなれたという感じですかね。


元々植物が好きだったということですが、昆虫も好きだったんですか?


管原

昆虫の研究者は子供の頃から昆虫採集とかよくやってたという人が多いんですけど、私はどちらかというと植物を眺めてた方なので。
植物をずっと3時間も、4時間も眺めている間、虫好きな人は虫を採ったりしていたわけですよね。
根本的に経験値も違うわけで、そこがコンプレックスでもあるんですよね。


ただそこはまぁ、虫好きな人がいてもいいし、虫好きじゃなくてもやっていける
必ずしもそういうバックグラウンドをもっていなきゃいけないわけではないですね。


大変なことなどありましたか?


管原

虫の飼育に全然慣れてなかったので、最初は大変でしたね。
筑波ではかなり大規模に昆虫を飼育していたので、3時間くらいずっと動き回って中屈みになったりするので腰が痛くて。
バッタの重いケージを持ち上げたりしていると指先を酷使するので、指と爪の間から血が出てきてまさしく血がにじむ思いで出血しながらやっていました。


でも一年くらいやってると不思議と痛くならなくなってくるんですよね。
もう、全然へっちゃらです。



研究室の指導方針や学生に期待すること


研究室についてもお話を伺いたいのですが、学生の指導方針などはどのようにお考えですか?


管原

指導方針というと学生を管理するようなイメージですよね。
もちろん指導はしますが、研究室のマネジメントはしつつプレーヤーの一人としてやっているという感じですね。


先生がお山の大将みたいな雰囲気が好きじゃないので、できるだけそうならないように研究の面では対等ということを心掛けています。


学生と一緒に研究されているような雰囲気でしょうか。


管原

ロジックとしてはそうなのですが、人間が相手だとそう単純にいく問題じゃなかったりします
どちらかというと強制してほしいというタイプの人もいるわけです。
強制してほしいという要望に対して、「いやです、強制はしません。」というのは変な感じだし。


弘前大学に着任してまだ2年ほどでそんなに指導経験があるわけではないので、今後方向転換するかもしれない。まだわからないです(笑)。


学生もバッタを研究テーマにしているのですか?


管原

そうですね。バッタの飼育は学生も私もやりますが、各個人は自分の研究テーマをもって、それに取り組んでいます。
私も学生のテーマの種になるようなアイデアのための実験や、自分の実験をやっています。


やっぱり虫好きな学生が多いのでしょうか?


管原

半々くらいですかね。
虫好きな人も当然いますけど、必ずしも虫が好きだからというわけでもないですよ。


うちの学科は食品科学と一緒なので食品の成分分析をしている学生もいて、食品をやりたい学生は昆虫を選ばないですね。
ある程度生物学をやりたい学生が研究室に来るので、昆虫は見たくもないという学生はいないです。


どのような学生に来てほしいですか。


管原

色んなこと前向きな学生がいいんじゃないでしょうか。
訓練次第だと思うので、研究室に来ることでそうなってくれればいいなと。


研究の世界でも自分は専門の研究しかしないとなるとタコツボ化して研究の幅が全然広がらない


最近は特に、画像認識の分野と他の分野とが融合することが多いですよね。
研究もそうで、例えば、昆虫食のテーマに関しても食品科学とか別の専門の先生と研究することもあります。


自分の専門に特化したいという人もいると思いますが、他の分野に目を向けることも大事ですよね。


管原

なんでも前向きに色んなことに取り組んだ方が面白いし、そもそも学問の意義の一つとして自分の視野を広げるというところもすごく大きいと思うんです。
学問によって視野が狭まるというのは、ちょっと本末転倒のような気がします。


せっかく学問やっているので視野を広げて、昆虫なんだけど昆虫に関係する別のことをやりたいというのも全然いいと思います。何事も積極的にやれるといいですね。


よく分かります。


管原

ただ人間は気質があるので、そういうのは嫌だ、あまり人と関わりたくないという人もいますよね。
それはそれでいいと思うんです。


アンビバレントな感情なんですけど、積極的であってほしい一方で、そのままでもそれもいいところの一つだよねという気持ちもあって。どっちの一面も持っていて欲しいです。
積極的な一面もあるし、もっと愚直な感じで地味なところで黙々とやりたいというメンタルをもっていても、そこは一貫してなくてもいいと思います。


【インタビュー前編】

バッタの生命現象のメカニズムを解明する!|弘前大学管原亮平先生インタビュー【前編】


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