塩崎研究室

鹿児島大学水産学部食品生命科学分野

インタビュー
2020.09.21

海の中にある無限の世界!水産学部の魅力とは?|鹿児島大学塩崎一弘准教授インタビュー【後編】

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鹿児島大学水産学部食品生命科学分野の塩崎一弘准教授のオンラインインタビュー後編です。


前編ではゼブラフィッシュを用いた疾病モデルによるうつ病の研究や、先生の研究内容の変遷などについて伺いました。後編では、ディスカッションを主軸とした研究室の運営や、海の世界を研究する面白さについて伺います。


年齢や肩書は関係ない!臆せず意見を言い合える環境


研究室の指導方針について聞かせて下さい。


塩崎

鹿児島大学は地方の国立大学なんですが、学生さんがすごく素直なんですね。
素直というのはどういうことかというと、疑うや考えるといった能力やトレーニングが足りないかなと思います。


予想と違った結果が出ると、これは間違いだという風に考えたり、教科書と違うので間違いだと考えてしまう。
「他の考えはないの?」と聞くんですが、考えるといったことが得意じゃないんです。


そこが研究のおもしろさでもあるんですけどね……。


塩崎

なので「考えろ」という話をします。なんでそうなったかをディスカッションしようと。
僕のモットーは、研究室では3年生でもマスターでもドクターでもある意味イーブン
自分の考えは臆せずに、みんなで言い合おうと言っています。


年齢や肩書に関わらず、意見を言い合える環境って良いですね。


塩崎

学生達には「君たちは知識は足りないかもしれないし、論文も読んでないかもしれない。でも、斬新なアイデアを出せる可能性がある。」とよく言っています。それで勉強が足りないと怒ることは絶対にしない。


意見を臆せず言い合ってディスカッションしているうちに、もっと調べようとか、もっと他にあるんじゃないか、という考える力が身につく


ディスカッションは大事ですね。


塩崎

考えることが苦手な学生さんが多いので、研究という力を借りて成長させられればいいなと思っています。僕らもいい研究がしたいので、「Win-Win」です(笑)。


綺麗事を言うと、考える力は社会に出てからも役に立つし自分を助ける。上の言うことは絶対だという体育会系のラボはつくりたくない。


フラットな雰囲気のなかで、学生もだんだん意見を言うようになっていくんですね。


塩崎

研究室ではそういう雰囲気をつくろうとしています。洗い物など研究室の仕事は4年生が担当するところもあるんですけど、うちはみんなでやります。


片付けが苦手だったり、僕も含めてみんなできることとできないことがあるので、お互いにカバーしながらやっていく
そうすると、お互いのことがより分かって研究に取り組むので、ディスカッションもしやすくなるんです。


いいですね!自由な発想も生まれやすくなりそうです。


ディスカッションの重要性


塩崎

天才ってほとんどいないと思うんですよ。
僕も含めて普通の人。天才は一人でアイデア考えて立ち上げる力があるんだと思いますが、普通の人は頭のキャパや能力には限界がある。


そこをどうするかというと、お互いに高めあうしかない。高め合う手段としてディスカッションしたり、考えたり、実験したりというのがすごく重要なんです。


分かります。人と話すことで新しい発想やアイデアが生まれることもありますよね。


塩崎

凡人だけど凡人の力を集めることによって、ちょっと高い思考ができる。
教育の面でも大事だけど、研究する上でも重要かなと思うんです。


ディスカッションすることで研究に対しても能動的になりそうです。


塩崎

言いたいことを言うためには、手を動かさないと言いたいことも出てこないので実験も沢山する。
やらされる実験より、やっぱりモチベーションが変わってきます。


特に我々は生物を扱っているのでやることは沢山あります。
生物というのはある意味ゴールがないんですね。変化する要素が多くあって、それに起因してどんどん発展していく。研究の発展性ですね。


ゴールがないからこそ、高め合うことが大切。正に三人寄れば文殊の知恵ですね。


塩崎

研究室訪問の際、学生さんに考えてディスカッションしながらやっていくというのが研究室のポリシーであり生存戦略だと伝えています。
今はできなくてもかまわないけど、うちに来ればそういう能力が伸ばせます。


やはり、研究室に所属する前に生物の勉強は必須ですか?


塩崎

受験時に物理化学を選択して大学にくる学生は多いけど、私の研究分野では高校の生物の知識って結構重要なんです。
でも研究というのは教科書に載っていることと結構違います。高校で生物をやっていなくても、苦手でも構わない。
自分に必要になって手を動かせば必要な知識はすぐ覚えます


どのような学生に来てほしいでしょうか?


塩崎

水棲生物はわからないことがたくさんある。そのわからないことを明らかにすると、人の健康にも役立つかもしれないし、水産業にも活かせるかもしれない
めっちゃ「宝箱」だと思います。そういうことに興味がある人に来てほしいですね。


学生の卒業後の進路についても聞かせて下さい。


塩崎

食品系の研究開発や品質管理、流通といった就職先が多いです。
実は水産学部って就職がいいんですね。レアな学部だというのもありますし。
大学院に進学する人より、就職する学生さんは多いですね。



水産学部の魅力とは?

(甲南高校の研究基礎講座での研究紹介の様子)


これから大学や学部を選ぶ高校生にメッセージはありますか?


塩崎

水産学部は魚を獲ったり育てるだけの学部ではないよ、と伝えたいですね。
漁師や養殖業者になるイメージがあると思いますが、魚を使って人の病気の研究や遺伝子工学もできる


「水産学部は漁師になるため、養殖をするためだけの学部ではないよ」と口をすっぱくして言いたいです。


水産学部の魅力ってどんなところですか?


塩崎

一番おもしろいのは、海はすごく広くていろんな生物がいて、わかっていないこともたくさんあるということ。
いろんな魚がいて、それぞれが違ったDNAやたんぱく質があります。それをやっていくワクワク感というのは、僕の年齢になってもいまだに面白い。若い学生さんにとっても、やっぱり面白いと思うんです。


海の中は未知の世界が広がっているんですね!


塩崎

未だに新種はどんどん見つかるし、深海魚が見つかればみんなテンションが上がるし、外国には日本にはいない変な魚がたくさんいるし。


例えば、「ドウクツギョ(洞窟魚)」というメキシコの魚は暗い洞窟にずっと棲んでいて目が退化して、目がないんです。
においと触線といって感覚だけで餌や、仲間を見つけたりします。暗闇にいてあまり餌が食べられない。だから餌を見逃さないように寝ちゃったらまずいので、いつも興奮状態にいるんです。いかにエネルギーをうまくつかって効率よく生きていくかということが重要なんですね。


そんな魚がいるんですね!好奇心が刺激されます。


塩崎

我々はご飯を食べたりするとコレステロールが変動するんですが、洞窟魚はあまり変動しない。血中のコレステロールを高く保っている。これは人の病気の状態と似ているんじゃないかという風に、人にも結び付けて考えます。
これは一つの例ですが、そういうのが無限にあっておもしろい


わからないことを知りたいというのは、純粋な学びのような気がします。


塩崎

沢山のわからないことがあって、解明したことを世の中にアウトプットしていくのは非常に楽しい、というのを強調したい。


出口ありきも重要だけど、単純にわからないことにチャレンジしてみる。そして「これは何の役に立つのだろう」と考えてみる。
そのネタが海のなかはすごく沢山あって、すごく楽しいので「新しいことを見つけたい、チャレンジしたい」という人には、すごく向いている分野じゃないのかなと思います。


【インタビュー前編】

うつ病のゼブラフィッシュって何?水棲生物から人間の健康への応用を目指す|鹿児島大学塩崎一弘准教授インタビュー【前編】

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