微生物潜在酵素(天野エンザイム)寄付講座

東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻

インタビュー
2020.05.07

微生物から新たなバイオテクノロジーを|東京大学尾仲宏康先生インタビュー【後編】

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東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻「微生物潜在酵素(天野エンザイム)寄付講座」尾仲宏康先生のインタビュー後編です。


前編では研究室の目指すこと、研究対象の「放線菌」の複合培養で薬のもととなる物質を発見した話を伺いました。


後編では微生物が抗生物質を作り出す仕組みやその応用、抗生物質自体の働きから新しい薬の開発を目指す研究について、そして「研究」についてお話し頂きました。



自然現象の解明からテクノロジーへ


前回は放線菌がつくる化合物のお話を伺いましたが、その化合物がどのように作られているのかについても研究されていますね。


尾仲

放線菌は何万種類という抗生物質を作っているわけですが、全部を調べるわけにはいけないので、我々は一つモデルとして「ゴードスポリン」という化合物の生成方法を明らかにしてます。


どのような研究でしょうか?


尾仲

合成するのに必要な酵素を遺伝子で調べて、大腸菌の中で発現させて、組み換えタンパクとして調製をしてから、プラスチックの小さなチューブの試験管に、材料やDNAを全部入れて反応させるんです。
すると、放線菌を使わないで化合物ができるんです。非常に単純にDNAとアミノ酸から、試験官のチューブのなかで一晩できるんですよ!


人工的に同じものが作れるんですね!


尾仲

鋳型になるDNAの配列を変えると、アミノ酸の配列が変わり、同じ方法でチューブの中に入れてやると、それに応じて色々なものができる。微妙に構造が変わるようなものを作り出すことができるんですね。


理学部の菅裕明先生と共同研究で、論文も出してるんですけど、放線菌がどうやって化合物を作るかを理解して、それを応用して色々なものを人工的に作り出すようなことをしてます。


自然現象を解明することで、色々なものを人工的に作れるんですね。


尾仲

チューブなら中に合成した遺伝子をちょこんと入れれば、翌日にはできる。
大量生産には、培養タンクを使って放線菌に作らせる方が向いてるんです。タンクの中で勝手に増えていくので、人工的な方法で薬としてより有用な化合物を探し、それを放線菌をつかって大量に作る。そのようなことを考えています。


意図した配列の化合物も作れるのですか?


尾仲

実際には作ろうと思って狙っても、それに使えそうな放線菌がなければ作れないです。最初に見つけたのが、たまたま僕らが研究の中で発見した「ゴードスポリン」なんです。
ペプチドのアミノ酸が繋がったようなものなんですけど、単なるアミノ酸ではなく、途中で修飾を受けたような複雑な構造なんです。これをベースに使えばもっと複雑なものを作れるんじゃないか、と応用していった感じですね。


たまたま発見したものから、もっと応用できそうだなと思ったんですね。


尾仲

生物学の研究って、もともと発見がすごく大事なところで。自然界に存在するものを使って、人間がそれをテクノロジーに変えていく
自然界でこういうものが作られていると知り、僕らはこれをベースにもっと薬に使えるような化合物を作れるんじゃないか、というのが発想の原点ですね。


なるほど!


尾仲

共同研究をしてる菅裕明先生は「ペプチドリーム」という、バイオベンチャー企業の創業者なんです。
現在は東証一部に上場していて、製薬会社と共同研究をたくさんしているような会社なんですが、その菅裕明先生もこの技術は面白いって言ってて。なにか実用化できるんじゃないかと期待しています。



抗生物質の働きを解明して、新しい薬の開発へ


尾仲

最後に、「抗生物質はどうして薬として働くのか」というところですね。


「ゴードスポリン」という化合物は、バクテリアや微生物を殺すんですが、そのメカニズムを調べています。
メカニズムを解明することで、これまで報告されていない新しい仕組みが分かり、微生物の新しいターゲットが分かります。これまで知られていなかったところに作用することによって、死ななかった菌が死んでしまうんです。


これまで発見されてなかった、菌の新しい作用点に攻撃するんですね。


尾仲

例えば、抗生物質を出しても効かないという問題がありますよね。今までの抗生物質ではターゲットが決まっているんです。そこに対しては、微生物の方もうまく進化して、適応して乗り越えられるようになっている。


でも新しくわかった作用点をターゲットにすると、微生物のなかで攻撃点が違う。そうすると今まで効かなかった菌に対しても効くような薬になるような可能性があるんです。今は、これの基礎研究をやってますね。


新しい薬の開発に繋がる研究ですね!


尾仲

これらが、僕らが具体的にやっている研究内容ですね。これらの全体を理解することによって、生命というか、薬を作る放線菌の生き様だけではなくて、なにか生命現象全体に繋がるようなものが見えてくるんじゃないかと思っているんです。



一つのことを長く考え続けるということ


放線菌に出会ったきっかけについて聞かせてください。


尾仲

学生時代研究室に入ったときに初めて放線菌という薬を作る微生物に出会いました。それまでまったく知識がない状態で入って、そこで学生として過ごしている間に、やっぱり微生物は色々できるし面白いぞと思って。
放線菌のなかで自分の興味を広げていって、結果的に全部繋がったという感じですかね。


学生時代からずっと放線菌の研究をされているんですね!


尾仲

大学の卒論研究からで、ずっとやっていますね。本当は変えればいいんですけどね(笑)。


一貫して追求されてるのがいいと思います!


尾仲

最初はこの菌が面白いことも全然わからない。ただ先輩にやれって言われたことをやるみたいな感じで、「何がおもしろいんだろう?」とかって思ってたんですけどね。
ドクターまで行ったら、5、6年くらい掛かるので、ある程度放線菌についてはスペシャリストになってるわけですよね。そうすると、もっと極めることもできるんじゃないか、とか色々出てくるわけです。


続けていることで、段々とおもしろくなってくるんですね!


尾仲

石の上にも三年じゃないですけど、長く一つのことをやり続けるということです。
今の時代にはそぐわないのかもしれないけど、研究の本質というのはそういうところにあるかもしれないですね。


といいますと?


尾仲

簡単な思いつきで、なにか大発見に繋がるようなものじゃなくて、常にこのことばっかりずっと考えてると、ある日突然ポンッと出てくるっていうか。
それが大きな科学技術のイノベーションに繋がると思うんですよね。


なるほど。考え尽くした、その先にある感じでしょうか。


尾仲

大きな技術革新に繋がるようなものは、ずっとそればっかり考え続けてて、端からみたら変人じゃないかというぐらいの変質的なところから行き着くんじゃないかと、最近は思いますね。


今はすぐ結果を求められたりしますが、長く考え続けるというのは大事ですよね。


尾仲

「プロジェクト研究」のような、何か目標があって、それに向かってやっていくようなものもありますよね。


でも「研究」というのは、本当はそうじゃない。言ってしまえば、遊びみたいなもので。子どもが遊んでるときに、ふとした拍子に新しい遊びを発見するみたいな。


研究を心から楽しんで、子どもが遊んでいるときのように自由な発想でするといいのかもしれませんね。


尾仲

学生にもそういうところに達してほしいな、と思ってるんですよ。研究を突き詰めて、新しい遊び、新しい概念をそこから見つけ出すようなところまで行ってくれるといいな、と思って指導してますね。




【前編】

微生物から「生きるとは何か」を追求する。微生物潜在酵素の研究とは?|東京大学尾仲宏康先生インタビュー【前編】


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