川村康文研究室

東京理科大学理学部第一部物理学科

インタビュー
2020.03.19

数式をはみ出したい!“そこにある物理”に魅せられて|東京理科大学川村康文教授インタビュー【後編】

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【前編】

大人になってからでも遅くない?自然エネルギーとサイエンスコミュニケーションで、物理の楽しさを|東京理科大学川村康文教授インタビュー【前編】


東京理科大学理学部第一部物理学科の川村康文教授のインタビュー後編です。


前編では自然エネルギーとサイエンスコミュニケーションの研究についてお話を伺いました。

後編では現在の研究に繋がる子供時代の興味や大学時代の夢、そして現在考えられていることなど、自然エネルギーと物理教育というハイブリッドなテーマをもつ川村教授ならではのお話を伺いました。


科学者ではなくアーティスト?

学生時代はどんな学生でしたか?


川村

大学ではロックバンドをやっていました。例えば、ビートルズは知ってますか?


ビートルズですか!?もちろんです。


川村

世界的にすごい人気があって、女王陛下から勲章をもらってて。あるいは、ボブ・ディランとか。


彼らは情報発信能力が高いんですよね。僕はそういう意味では、俳優、ミュージシャン、宗教家といった人達が政治の世界で活躍するのがいいのかなと思ってたんです。


それはなぜでしょうか?


川村

情報発信力の高い人にきちんと内容が伴えば、ベンサムの言う「最大多数の最大幸福」が実現の方向に向かうのかなと思っていたんです。科学者になりたいというよりは、そういったアーティストになりたいという気持ちが強かったですね。


なるほど。良く分かります!
逆に専門性を持った方々、研究者などがより情報発信をしてほしいという想いもあるので……。


“そこにある物理”に惹かれて


物理は子供の頃から好きだったのですか?


川村

子供の頃から理科は好きでした。中でも、なぜか分からないけど虫が好きでしたね。でも生物は得意じゃなかった。


昆虫オタクで、昆虫の造りやフォーム、デザイン性に興味があったんです。
結局、電車の形や電信柱、飛行機、蝶の羽など空力的なデザインに興味があって。それが現在の風力発電や太陽光発電に繋がったんだと思います。


子供の頃の興味がそういう形で今に繋がっているんですね。


川村

物理学の法則に痺れて、数式が大好きでやっているということではなくて、“そこにある物理”が好きなんです。
要するに、目の前にある物理に惹かれてしまう。それでやってしまうんです(笑)。


“そこにある物理”ですか?


川村

目の前で展開している物理現象ですね。川の水が流れを見ていると、なんでここで渦を巻くんだろうとか。子供の頃はそれが不思議で。


背後に隠れている数式ではなく、今目の前で起きていることに惹かれるんですね!


川村

他には、空気の流れも好きですね。レーシングカーの気流のシミュレーションを見ると、車のフォルムの美しさが見えてきたり、空力特性とかを考えますね。ダウンフォースというのはわかりますか?


ダウンフォース?


川村

揚力と反対で、車体が浮かないように地面に押し付ける力です。そういった空気の流れで、どんなふうに車体が空中に舞わないように押さえつけられてるかとか。ある程度タイヤと路面の摩擦力がないと、カーブなんかで滑ってしまいますからね。
それを判断しながら操縦のうまさに繋がっていくところとかね。


レーシングカーの空気の流れから、色々なものが見えてくるんですね。


川村

場合によってはすごくカオスな部分で、ひとつの微分方程式できちんと書けるというよりは、色んな副次項が入ってくるという状態ですね。コンピュータでも近似的にしか解けないような。


ゴリゴリの数式が好きな人いるでしょ?私は数式が苦手というのが逆にあるのかもしれないけど(笑)。


そうですね。私もどちらかというと好きな方かも……。


川村

アインシュタインの「数式は美しい」という名言がありますね。
その言葉には感動するし共感するけど、私たちは数式の中で生きているわけじゃないとも思うんです。


もし数式の中で生きてるとしたら、数式をはみ出たい。数式にカオスを起こしたいと思ってるんです。
コンピュータでいうとアプリよりバグみたいなものかもしれないですね(笑)。



平等な社会のための「学び」


川村

でも、人を攻撃するようなウイルスなんかは嫌いですよ。どんな分野でもよくできる人は、自分で生きてもらったらいいと思うんですよ。


でもね、人間ってできない人って多いでしょ。できない人にトロイの木馬でも送りつけたりしたら、その人たちは何もできないで倒れちゃいますよね。


だから、できない人も幸せになれるように、できる人たちがケアする。情報の社会って特にそうだと思うんですよね。情報に遅れている人達を、トップランナーの人達が守ってあげる。


とても優しい考え方ですね。


川村

そうしないと、その人達が損するために生きてきたような社会になっちゃうでしょ。
麻雀で言ったら、「あいつ誘っておけば、常に振り込んでくれる」みたいなことにならないように(笑)。


やっぱり、人間が平等な社会というか……。


それには、知識や教育が大切ということですね。


川村

人生100年時代というからには、65歳以上で定年を過ぎても学ぶ。
先ほどの「ラ・カンパネラ」の話もそうですね。ピアノが全くできなかったところから始めて、練習して、「ラ・カンパネラ」を弾けるようになるという。


人生、一生学びですね。


川村

僕らが刷り込まれている文化の中に、ピアノは小さい頃に始めないと無理だよと言われてる。
でも50代半ばから始めた人がそこまでいけるということは、人間の能力というのはやろうと思えばやれるんだと思います。
そういうことに共感してくれるような若者が多かったら、嬉しいですね。



【インタビュー前編】

大人になってからでも遅くない?自然エネルギーとサイエンスコミュニケーションで、物理の楽しさを|東京理科大学川村康文教授インタビュー【前編】



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将来理科教師を目指す学生に、理科指導や実験指導も得意で、しかも生徒のハートをがっちりつかむことができる、そんな先生を育てたいと考えています。 そのために、サイエンス・コミュニケーション特別演習ゼミを、週に1日行っています。 あらゆることに興味を持ち、毎日ワクワクしたいと努力するやる気のある学生を求めます。
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