知的都市機能研究室

千葉大学大学院融合理工学府都市環境システムコース

インタビュー
2020.02.02

なぜ人は協力するのか?自分の感性に合った「強化学習」に出会うまでの経緯|千葉大学荒井幸代教授インタビュー【後編】

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【インタビュー前編】

AIで都市環境の問題を解決!知的都市機能研究室ってどんなところ?|千葉大学荒井幸代教授インタビュー【前編】


千葉大学大学院融合理工学府都市環境システムコースの荒井幸代教授にお話を伺ってきました。


前編では、主に研究テーマや研究室の雰囲気についてお話していただきました。


後編では、なぜ研究者を目指したのか、これまでの経緯など、研究者ご自身のことについて深堀りしてお話を伺ってきました。


研究者を目指したきっかけは中学時代の先生の影響

一番最初に研究者を目指したきっかけは何でしょうか?


荒井

中学生の時から大学の先生になりたいですっていうのは言ってたんです。なぜかというと大学の付属の学校だったので、当時理学部かなんかの女性の研究者が生物の授業を受け持ってくれていたんです。


それを見て、すごいかっこいいなって思って。すごく楽しそうに「たんぽぽを揚げるとと美味しいんだ」とか言うんですよ。


その時に初めて大学の研究者っていう職業があるんだって知って、こういう仕事がしたいなって思いました。分野は特に決まってなかったんですけど、その頃からずっと研究者になりたいなって思っていました。


研究者の方の授業を受けられたっていうのは良い経験ですね。研究者ならではの視点から学問の面白さが伝わるような気がします。


その後はどのような感じで進んでいったのでしょうか?


荒井

最初は地球物理学やりたいなって思ってたんですが、実際受験とかも経て、早々うまい具合にはいかないもんで。それで当時は分子生物学とか、どちらかというと人間の中身みたいなものをやりたいなと思ってたんです。


今と全然違いますね!


荒井

でも突然何かの拍子にデジタル回路って言う全く違う分野に行ったんです。アナログからデジタルに来るぞみたいな感じの流れがあって、そういう転換期だったんです。


私は割とデジタルに関しては音痴だったんで、ちょっとそういうの知ってないと困るよねと思って。そういう時代の流れとかに乗るタイプではなかったんですけど。


それはまたなぜでしょうか?


荒井

それはなぜかっていうと……自分でも理由は分かっているんです。簡単に言うと、工学の中では化学生物系は女性が多かったんです。私はあんまりワイワイ群れるのが嫌いだったので(笑)。


女性がいないところに行こうと思ってデジタル系に行ったら、案外面白くて割と無機物的なところも合うなっていうのが最初にこの分野に来たきっかけです。


企業への就職、そしてやりたい研究分野との出会い

大学を卒業されてからはどうでしょうか?


荒井

学部を卒業して、ソニーに就職しました。デジタル回路をやっていたので、テレビの中身とかいじりたいなって思って、当時は大学よりはソニーに行きたいなって思って就職しました。


そしたらちょうどHitBit(ヒットビット)っていうソニー初のパソコンを作るっていう流れがあって、テレビじゃなくてそっちの配属になったんです。その時にヒューマンインターフェースとか人を考えて物を作らなきゃダメだっていうことを徹底的にやらされたんですよ。


それでメンターの方がAIの本をくれたんです。人のことをわかんないとインターフェースできないぞっていうことで。それでだんだん今やっている分野に近づいてきました。


一度就職されてから、今の分野に出会ったんですね。


荒井

そうですね。その後大学に戻って、スチュワート・ラッセル先生のところに入りました。


スチュワート・ラッセル先生はAIの神様みたいな方で、その後すごい大ブレイクしちゃうんですけど。当時はたまたまその先生のところに入ったという感じです。私は元々へそ曲がりではあるので、人気がある所に行くというよりはちょっと違うところに行こうっていうのもあったので(笑)。


先生のところでビリーフネットワークやベイズとかを勉強して、動的計画法のような最適化ベースの方法だと元々いた制御工学にヒットするので、それで今の研究の方に入っていきました。




人のために親切で協力するやつなんていない!自分の感性に合った分野

当時の研究について詳しく教えていただけますか?


荒井

キーワードとしては「マルチエージェント」ですね。マルチエージェントっていうのは一言で言うと分散人工知能です。


人工知能はもうすごい優秀な方も沢山いてそこだともう勝負できないなっていうのがあったのと、人と協力するロボットなんてできるわけないよねっていうことを思っていて。じゃあ逆に協力するロボットについてやってみようかなと。


そもそも人はなんで協力するのかなっていうのは不思議に思っていたんです。そんなときに『利己的な遺伝子』っていう本が出て、要は「情けは人の為ならず」っていう。だから協調するんだ。それだったら設計できるなと思ったんです。


つまり、自分の利益のためということですね。


荒井

回り回って自分に来るっていうことですね。それなら報酬を最大化したいっていう前提は崩さなくても良いので、じゃあどういうメカニズムにしておけばいいのかなっていうのを考えてると割と面白いぞと。


私はどういうときに協力するかなとか、こうすれば協力するなとか。本当に人のために親切で協力するやつなんかいないっていう前提でやってるので。そんなこと普通は考えないでしょ?(笑)


それで強化学習の将来の報酬を割り引くっていう考え方がすごい面白くて、そういうところが気に入って。フレームワーク自体が非常に自然だし、即時報酬じゃなくても学習するっていうのと将来のことも考えられるっていう。あと罰も与えらる。分野によっては罰で学習したほうが早いっていうのもあったり。


将来の自分の報酬のために、今協力した方が得だから協力するっていう感じでしょうか。


荒井

まさにそういうことです。私自身の中にもそういう経験があるから協力するんだと思うんですよ。


そういう意味では、ニューラルネットワークは脳の神経回路を模したモデルって言われますけど、それは人間の学習じゃないだろうと内心思ってます。


ちょうど出会った強化学習が自分の感性にあったので、これを極めたいなって思って現在も研究していますね。



【インタビュー前編】

AIで都市環境の問題を解決!知的都市機能研究室ってどんなところ?|千葉大学荒井幸代教授インタビュー【前編】



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