知的都市機能研究室

千葉大学大学院融合理工学府都市環境システムコース

インタビュー
2020.01.26

AIで都市環境の問題を解決!知的都市機能研究室ってどんなところ?|千葉大学荒井幸代教授インタビュー【前編】

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千葉大学大学院融合理工学府都市環境システムコースの荒井幸代教授にお話を伺ってきました。


知的都市機能(荒井研究室)では、都市環境に関する諸問題について機械学習や数理最適化からアプローチを行っています。


キーワードは「マルチエージェントシステム」。


「知的都市機能とはどのような研究?」「研究室はどのような雰囲気?」「なぜ研究者を目指したのか?」などなど、多岐にわたるインタビュー内容を2回に分けて掲載します。


理論をベースに都市環境の問題を解決する研究室

まず初めに現在の研究テーマについて教えていただけますか。


荒井

私が今いる学科が都市環境システムという広い分野をカバーする問題志向の学科なので、都市やエネルギーの問題を解決するという研究を行っています。


都市やエネルギーの問題とは、具体的にはどのようなものでしょうか?


荒井

都市でも「交通」だったり、エネルギーでも「スマートグリッド」のような、複数のエージェントが協力するようなモデルが使えるような問題を考えています。


ずっとそのような研究をされていたんですか?


荒井

私自身はどちらかと言うと人工知能の理論ベースのところやロボティクスが背景にあって、人中心の問題っていうのはやってこなかったんです。


ただ、今の学科がそういう問題を扱っているということもあって、そのような問題を考えています。


元々は理論面の研究をされていて、今は実問題ベースで研究されているんですね。


荒井

周囲にそういう問題を持った先生方がいるっていうのも結構良い環境ではありますね。今までは本当に閉じてたんです。ロボットだけの学科とか情報だけの学科のように。


今は、土木や都市計画、リサイクルなど様々な専門の先生がいらっしゃって、最初はどうなることかと思ってたんですけど、連携ができるので面白い環境です。


周りの先生方と連携できると幅が広がって面白そうですね!


荒井

そうですね。だから「この問題だったら、こうモデル化してこう解いた方が良い」というように、周りから問題のネタをもらって、私の方で解き方をやるという感じです。



実問題を考える重要性

理論面の研究はどのようなことをされていたのですか?


荒井

博士論文は制御工学で取っています。今の現代制御理論で解けない問題の解決方法として「強化学習」に触手を伸ばしていたので、マルチロボットとかが元々の対象問題だったんです。


都市はたくさん人がいるよねっていうところから繋がって、しかもロボットみたいに言うこと聞かないとなってくると行動経済学とかも絡んできたりする。なので千葉大に来てからは、行動経済学だったり他の分野の学問も少し分かるようになりました。


行動経済学まで!


荒井

だからいろんな分野に興味がある人には面白いと思いますよ。


私の場合は元々そんなに理論を突き詰められるタイプではなかったので、そうするとその理論の拡張だったり改善だったり、そういう方向の研究なると思うんですよ。でも、どうしたら拡張できるかなんて実問題がないと分からない。


実問題を持っていると、どこに改善の見込みがありそうかっていう問題意識を持つことができますよね。例えば、交通だったらここにノイズが乗るとか、この情報が不完全になるからここを近似しようとか。


解きたい実問題があるというよりは、理論をいかに実問題に応用するかっていう感じなんですね。


荒井

そうなんですよ。ぼーっとしてると交通とかエネルギーとかやってる研究室だなと思われるんですけど、よく見ると強化学習しかやってない。強化学習は最適化の方法でもあるので、うちの研究室で研究するならその周辺の理論は理解する必要があります。


研究室の方針はとにかく自分で考えさせる

研究室の学生にはどのような指導方針で教育を行っていますか?


荒井

いきなりテーマは与えないですね。まあゼロから自分でネタ探してくるっていうよりは、色々な問題を見て「こういうのに興味があります」って言ってきたときに、じゃあそれをどうやってモデル化すれば良いんだろうとか考えさせたりします。


最初はみんな結構ふわっと「鉄道の混雑をどうにかしたい」とか言ってくるんですよ。それをどうやって何を良くするの?ってどんどん切り捨てていく。そのままじゃ解けないでしょって。


夏ぐらいまでにそういう方法でガンガンやっていくと、必死になって論文を読んでだりして、定式化の知識も大分付いてきます。


自由に見えて結構大変だと思いますよ、自分で考えなければいけないので。


分かります。テーマが自由っていうのは結構大変ですよね。


荒井

何したらいいんだろうって(笑)。ある意味では、従来から解けないと言われているような問題、例えば巡回セールスマン問題をどう解くかとかを考えるのに比べて大変だと思います。


だから「問題を作る」ということをやりたい人は向いていると思います。


一回問題を作っちゃっえば今度は解くっていうフェーズに入るんですけど、今度はそのままじゃ解けないので、じゃあどうすれば解けるの?ってまた追い詰めて……というか自分自身で追い込んでますけど。



自由は大変……だからこそ面白い!

テーマを与えないのは、やっぱり考える力を付けてほしいってことでしょうか。


荒井

そうですね。まぁ意図してっていうよりは、私自身も自分の中でそこまで熟成してないっていうのもあります。最初からこの問題のここを解きなさいって言えるわけではないので、一緒に考えながらやっているという感じです。


その方が研究にも能動的になれそうですね。


荒井

そうだと思います。みんな大変だったけど面白くなってきたって言ってますね。あと人の発表を聞いていて中身はよく分からなくても流れとかは理解できるスキルが付くんですよ。


それは良いですね!


荒井

あとは、学会に出すかどうかも自分で決めさせます。みんな出したいって言うんですけど、最初はこれじゃダメだって言われて、そこから何度も相談しながら詰めていきます。


学会に出すと決まったら、とにかくやるしかない。計画も自分で立ててもらいます。「ここで発表するんだから、いつまでに実験終わってなきゃダメなの?」という感じで。私から「いつまでに実験終わらせてね」とは言いません。


みんな必死ですね。徹夜してプログラム書いたりしてますけど、時間掛けたからといってできないものはできないじゃないですか。どこをどうしてもうまくプログラムが動かないとか。だから精神的に追い詰められる時期はあるみたいです。


大変そう……。だけどかなり力は付くと思います。


学生に求めるのは「打たれ強さ」

お話を伺っていると結構厳しいという印象がありますが……実際はどうなんでしょうか?


荒井

研究室紹介のところに「打たれ強いこと」って書いてありますからね。ゼミでも厳しいこと言われるっていうのはみんな知ってると思います。


打たれ強さ……!


荒井

私自身の経験としても、表情に出さない先生よりはっきり言ってくれる先生の方が良かった。だから、元々の性格もありますけど、そういう風にしていますっていうのを学生にも言うんです。親に叱られたことがないような人は多分ダメだとか。


みんなそういうの分かって入ってきますし、負けず嫌いな人が多いですね。何か言われたら今度こそっていう感じで勉強してくる。


でもそれはゼミのときだけで、みんなで学食とか行ったり、普段は楽しく話してます。すごい頑張ってるのは分かるので。



【インタビュー後編】

なぜ人は協力するのか?自分の感性に合った「強化学習」に出会うまでの経緯|千葉大学荒井幸代教授インタビュー【後編】


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当研究室では,機械学習(Machine Learning),数理最適化から,都市の交通,減災,地盤分類,鉄道(運転整理,停止制御),電力融通最適化といった問題にアプローチします. 建築・デザイン系でも,進化計算などの人工生命による創発デザインや、マルチエージェント技術による施設配置,自律分散システムによるアプローチ,アフォーダンスなど,人間の意思決定に興味のある方であれば歓迎します.
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