山下研究室

東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻

インタビュー
2020.06.04

ロボットの遠隔操作はなぜ難しい?社会の役に立つロボット技術の研究とは|東京大学山下淳准教授インタビュー

研究室ホームページ構築&運用サービス

今回は、東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻の山下淳准教授にお話を伺いました。


山下研究室では、ロボットやマルチメディア情報処理に関する研究が行われています。

一言で「ロボット」と言っても幅広いですが、どのような想いでどのような研究をされているのか、研究室の雰囲気なども含めて様々なお話を伺ってきました。



ハードとソフトの両面から社会に役立つロボットを


まず、研究内容について聞かせてください。


山下

画像処理やコンピュータビジョンといった人間の目の働きをコンピュータで実現する技術、それからセンサ情報処理技術を中心に、ロボットやマルチメディア、ヒューマンインターフェース、外観検査などの研究に取り組んでいます。


具体的にはどのような研究があるのでしょうか?


山下

そうですねぇ……例えば、カメラの映像を解析し、障害物の場所や形状を自動的に検知して、ロボットを自動的に制御する研究や、センサによって得られた情報をビジュアライズし、オペレーターにわかりやすく表示して、それをもとにロボットを遠隔操作する技術の研究です。


ほかにもマイクで録音した音響データを機械学習を活用しながら解析し、コンクリート構造物の内部に生じたクラックや空洞を発見する技術など、ハードウェアとソフトウェアの両面で研究を進めています。


とっても多彩ですね!


近年、特に力を入れていることは何でしょう?


山下

一つは、ロボットによるインフラの自動点検です。


日本では高度成長期に集中的に建設されたトンネルや橋梁など、コンクリート構造物の高齢化が進んでいます。
これまでの点検業務は、目視や打音検査など、人の五感に頼って行われていましたが、これをロボットに置き換え、全自動のシステムや、人に優しいシステムをつくることで省力化を図るのが狙いです。


おぉ!とても社会に役立ちそうですね!


山下

それから、屋外の工事現場の建機や、大規模災害の被災地の調査などに応用することのできるロボット技術の研究にも力を入れています。
瓦礫が散在した場所や不整地をものともせず、遠隔操作で移動することのできるロボットをつくっているんです。


遠隔操縦というとラジコンみたいなイメージでしょうか?
昔からある技術のように思えますが……、今でも難しいのでしょうか?


山下

確かに、ラジコンのようにロボットの動きを上から俯瞰できる環境であれば、それほど難しいものではありません。
ただ、建設現場や災害・事故の現場にロボットが投入されるのは、人間が入ることができない過酷な環境ですよね。こうした状況で遠隔操縦を行うのはとても難しいんです。


なるほど、環境が全く違うと!


山下

例えば、オペレーターは、ロボットに搭載されたカメラの映像を遠隔地で見ながら操縦するわけですが、頭や視線の動きに視野が追従しなかったり、映像の動きに身体の傾きの感覚が伴っていなかったりと、人間とカメラの視覚には大きな違いがあります。


実際に操作してみると、難しいんですね……。


山下

また、無線による通信にはどうしても時間がかかりますので、ロボット側から送られてきた映像を見て、オペレーターが次の操作をした時には、ロボットが落とし穴に落ちているということだって考えられます。
遠隔操縦しやすいシステムをつくるには、さまざまな技術を駆使して、こうした難点をカバーしていく必要があるんですね。



きっかけは東日本大震災

先生はもともとインフラの点検や、建設や災害・事故の現場で活躍するロボットに関心をお持ちだったんですか?


山下

いえいえ。学生時代は「群ロボット」といって、複数の移動ロボットの協調行動について研究していたんですよ。


現在のテーマにシフトするきっかけとなったのは、3.11の東日本大震災によって引き起こされた福島第一原子力発電所の事故でした。
当時は完全自動で自律的に動き回るロボットは現実的ではなかったので、遠隔操作で移動するロボットについて本格的に研究することにしたんです。


東日本大震災の被災地では、海外製のロボットが活躍したと記憶しています。
日本のロボット技術の水準については、どのように考えればいいでしょうか。


山下

実は、日本のロボット技術は、事故直後から現場で使われていました。
また、日本の企業や大学の技術力そのものは当時も世界最先端だったと思うのですが、基本的には一点もので、そのまま現場にすぐに投入できる体制が整っていませんでした。


一方、海外には、軍が企業や研究機関に資金を提供し、開発されたプロダクトを数千台単位で買い上げたりしていることもあって、すぐに稼動可能なロボットがたくさんあった。
こうした事情から、原子炉建屋内の放射線量や温度・湿度などの調査では、海外製のロボットも使用することになったんですね。


なるほど。東日本大震災以降の日本のロボット技術や市場についてはどのように見ていらっしゃいますか?


山下

もともと高度な技術力が蓄積されていたこともあり、東日本大震災以降、災害対応や事故対応、人命救助など、さまざまな分野でプロジェクトが立ち上げられました。


国土交通省を中心に進められている、建設現場におけるICTの全面活用を目指す取り組み「i-Construction」も、その一例です。
日本におけるロボットの市場は大きく広がっているといっていいでしょう。



企業との共同研究で人々の役に立つ実感を

研究室について聞かせてください。学生の指導方針についていかがでしょうか?


山下

基本的にはロボットや画像処理、音響解析といった研究分野の中で、自分の興味のあるテーマに挑戦してもらっています。
インドや中国など各国からの留学生や、企業から受け入れている研究生など、多様なメンバーが揃っていますよ。


企業と共同研究をされる機会も多いんですね!
学生にとっても大きなモチベーションになるのではないでしょうか?


山下

そうですね。自分の問題意識にばかり縛られていると、“絵に描いた餅”になってしまうケースも少なくないんです。
企業とディスカッションを繰り返すことで、いま社会に求められている技術を把握できますし、「そんなことまでできるのか!」という部分と、「そんなこともできてないのか……」という部分があることに気づくことができる。


その意味でも、企業と一緒に研究をするのはとても勉強になりますし、人々の役に立っていることが実感できて大きなやりがいを感じられると思います。


大学にいるとなかなか今やっている研究の意味や意義など見えにくい部分もあるので、学生にとっても良い環境ですね!


最後になりますが、どのような学生にきてほしいですか?


山下

知識やテクニックは「勉強したい」という意気込みさえあれば、いくらでも身につけることができます。
大切なのは、とにかく前向きで元気であることです。


なぜでしょう?


山下

研究は失敗の連続だからです。既存の技術では乗り越えられない壁にぶち当たることも少なくありません。


こうしたなかで長い時間をかけて研究に打ち込み、しっかりとした成果を出すためには、無数の失敗に直面しながらも、めげることなく努力を続けていくことのできる力が必要です。
ポジティブなマインドと体力を兼ね備えた学生の皆さんと一緒に研究がしたいですね。



研究室ホームページ構築&運用サービス

注目記事

研究室ホームページ構築&運用サービス

PAGE TOP