川本広行研究室

早稲田大学基幹理工学部機械科学・航空学科

インタビュー
2019.12.16

レーザープリンタから宇宙へ!精密工学の魅力とは?|早稲田大学川本広行教授インタビュー

早稲田大学基幹理工学部機械科学・航空学科の川本広行教授の研究室へインタビューしてきました。

主な研究テーマは「精密工学」です。


長い社会人経験を経て、なぜ大学の研究者になったのか?

レーザープリンタから始まり、宇宙技術まで広がるその技術とは?


今年度(2019年度)でご退職予定とのことで、これまでの人生を振り返りつつ、研究について語っていただきました。


学生時代から企業を経て、大学教員になるまで

ーー元々学生時代から現在の研究テーマを研究されていたんですか?


川本 私は早稲田大学ではなく広島大学出身で、しかも機械ではなく電気工学科、さらに学部卒だったんです。卒業後すぐに会社に勤めまして、最初は日立の工場で働いていました。19年くらいいたかな。


ーー結構長かったんですね。


川本 えぇ、長かったですね。辞めたときは課長だったんですけどね。どうもやっぱり会社と水が合わなくて。


ーーその時はどのようなお仕事をされていたんですか?


川本 設計ですね。電力機器の設計をやっていました。


あまり研究とは関係なく……いや、なくはなかったかな、回転機の設計をやっていまして、論文をちょこちょこ書いていたんですね。それを学会に出していたので、面白いじゃないかと言っていただける人が何人かいまして。全く縁はなかったんですけど、東工大の権威の先生に見ていただいて、論文博士を取りまして。その時は日立で、現場で働いていたので学位があったからといって何かメリットがあるわけでもなかったんですけどね。


それで19年いたんですけど、思い切って転職しようということで、41、42歳ぐらいのときに富士ゼロックスに転職したんです。

富士ゼロックスは複写機やプリンタをやられていて、前の仕事とは全く繋がりはありませんでした。


ーー論文がきっかけとなったのでしょうか?


川本 関係ないですね。まぁ学位があるので、そんな変な人じゃないだろうとなったんでしょうね。そのとき初めて学位が役に立ちました(笑)。


富士ゼロックスでは、研究所で複写機、レーザープリンタの研究開発をやっていました。

非常に良い会社で待遇も良かったんですが、やっぱり民間企業なので自由にやるというわけにはいかなくて。それで公的な研究機関、大学とかが良いんじゃないかと思い始めて、早稲田の応募したら運良く来てくれとなったんです。その時は48歳ぐらいです。


その頃から公募とかも増え始めていたんですが、早稲田の機械学科で他大学から採ったのは私が初めてらしいですね。逆に先生方からすれば1、2回会っただけなのに、よく決断してもらったなと。今思うとすごくありがたかったですね。


大学での研究、レーザープリンタから宇宙へ!?


川本 早稲田に来てからは、富士ゼロックスのときの研究の続きみたいなことをやっていました。ただ、企業でやることは製品を意識してやらなければいけない。大学でそれをやってもしょうがないので、そのベースとなる研究をやっていました。


簡潔に言うと、「小さな粒子を静電力を使って制御する」という研究ですね。


もちろんレーザープリンタそのものの研究も企業から委託を受けてやっていました。ただ、10年ぐらい前からレーザープリンタというのが煮詰まってきまして、大学で研究することもなくなってきたんですね。それでレーザープリンタの研究をやめて、宇宙関係の研究を始めました。


ーーレーザープリンタから宇宙とは、また意外ですね。


川本 宇宙も衛星が月の周りを周っている分には関係ないんですが、月だとか火星だとか、天体に降りると下は砂だらけなんです。そういうものが舞い上がって色んなトラブルを起こしたりする。それを回避するためには小さな粒子をハンドリングしなければいけないんですよ。そのベースの技術はレーザープリンタと全く同じなんですね。ここ10年は大体そのような研究をしています。


ーーベースの技術が宇宙まで広がるというのが面白いですね。


川本 まぁ「宇宙開発」っていうと凄いことやってると思うじゃないですか。確かに凄いんですけど、一つ一つの技術の中身を見ると必ずしもそうでもないんですね。宇宙技術と言ったって特別な技術があるわけじゃなくて、地上の色々な技術をうまく応用してやっているわけです。だから意外と技術的にはレーザープリンタの方がよっぽど奥が深いというかきちんとやられているしベースのサイエンスもちゃんと研究されているんです。


一つエポックがあったのは、NASAの人が面白いと言ってくれて、本物の月の砂をやるんでぜひ実験してみないか、と持ってきてくれたんですね。アポロから持って返ってきた本物の月の砂を。それを使ってうちの実験室で実験してね。別に模擬砂での実験と同じことなんですけどね。それはNHKに取り上げられて、少しの間ですが話題になりましたね。



学生と一緒に研究する面白さ

ーーどのようなときに研究の面白さを感じますか?


川本 うちは大学院生と一緒にやっていくという感じなので、やっぱり学生と一緒にやるのが面白いですね。まぁ学生には色々いて、とにかく卒業すればいいとか。でも中には面白いアイデアを出してきたりする学生もいて、そういうのが面白いですね。まぁ憎たらしい奴もいますけどね (笑)。


ーー何か思い出とかありますか?


川本 飛行機のパラボリックフライトというのを利用して、無重力状態で実験を行ったんですよ。飛行機に学生が乗って。お金が掛かるんですけど、少し無理をして。そういうのは今となっては楽しかったなと。


ーー学生にはどのような教育を行っていますか?


川本 卒業してから研究でやっていることをそのままやる人はいないんですね。よく学生に言っているのは、「今やっていることをそのまま仕事にするなんて思うな」と。だから、研究開発のやり方とか論文の書き方とかの訓練ですよね。中間発表をやって、原稿を書かせて、赤で直して……その積み重ねで、最終的に卒論という形でまとめて。原稿の書き方や発表資料の作り方など、結構細かく指導していますね。


直接仕事にはならないとはいえ、やっぱり今やってることをきちんと一生懸命やらなければ、会社行って頑張ろうとなってもうまくははいかないですよね。


ーー逆に辛かったことなどはありますか?


川本 研究は楽しかったですね。会社にいたときはちょっと辛いこともありましたが。大学はやっぱり自由です。自由っていうのが一番ですね。研究は自由でないと。


研究の未来について

ーー最後に少し大きい話ですが、研究の未来について思うことはありますか?


川本 まず今、世の中かなり変わってきていますね。研究のやり方も大分変わってくるんじゃないでしょうか。漠然とですが、研究そのもののやり方が大きく変わりつつあると思いますね。


ただし、ベースのことをきちんとしていないとできないというのは変わらないと思います。要するにその基礎になる教科書、機械でいうと「電磁気学」や「流体力学」とか。こういう教科書をちゃんと一行一行読んで、式も一行一行追って、一つ一つ頭に入れていくっていう、非常に地味なことですけど、それを疎かにしてはいけないと思います。目先のことばっかりやっててもダメでしょうね。


ーー役に立つことが求められすぎると基礎的なことが疎かになってしまいがちで、そこが難しいですよね。


川本 まぁ最後は役に立たないといけないと思うんですね。ただいきなりそこに近道で行こうと思ってもなかなかうまく行かないでしょう。今はもう色々な情報がWebに溢れていますよね。そのへんをうまく組み合わせて、あと何か少し足せばなんとなく研究らしきことはできると思うんです。でもそれは違うんじゃないかなと。ちゃんと一つ一つ積み上げて、遠回りをしていかないといけないんじゃないかなと思います。



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情報精密機器はマルチメディアの基盤となるハードウエアであり、なかでもカラープリンタなどの画像形成装置は、視覚を介して情報を記録・伝達するための重要な機器です。電磁気力や流体力を利用してトナーや液滴などの微粒子の運動や相変化を高速・高精度に制御する技術を基盤としており、電磁粒体力学、換言すれば、"電磁気力や流体力による粒体輸送の精密制御に関する研究"とでも称すべき学際的な研究を行っています。
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