神田洋ゼミ

江戸川大学メディアコミュニケーション学部

インタビュー
2020.03.05

新聞記者からアカデミズムへ!スポーツ・ジャーナリズムの世界とは|江戸川大学神田洋教授インタビュー

今回インタビューに伺ったのは、江戸川大学メディアコミュニケーション学部マス・コミュニケーション学科の神田洋教授です。


神田先生は元々新聞記者として25年間ご活躍されており、2017年より大学の教員として研究・教育をされております。

なぜアカデミックな世界へ転身したのか、そして現在どのような研究をされているのか、などなど新聞記者から大学教員という珍しいご経歴ならではのお話を伺ってきました。


スポーツとメディアの絡み合いを考える

まず研究テーマについて聞かせてください。


神田

一言でいえば、スポーツとメディアの関係について研究しています。


もとより近代スポーツはメディアと切っても切り離せない関係にあります。
つまり、出版物をはじめとするメディアの存在なくして今日の近代スポーツは存在しなかったはずですし、逆にスポーツがメディアのあり方を変えている面もある。


主に歴史的な観点から、両者の相互依存関係、絡み合いについて研究しているんです。


絡み合いといいますと、具体的にはどのような事柄をイメージすればいいでしょうか?


神田

わかりやすい事例として夏の甲子園を取り上げてみましょうか。ご存知の通り、この大会は朝日新聞社が主催していますが、もともと同社は反野球キャンペーンを展開し、野球がもたらす害悪について報道していたんです。


エッ、そうだったんですか!


神田

ところが、庶民の間での野球人気は高まる一方で、朝日新聞の発行部数が減ってしまった。


そこで同社は方向転換し、教育的な意味を持つ正しい野球を確立するというビジョンを掲げ、現在の全国高等学校野球選手権大会の前身である「全国中等学校優勝野球大会」をスタートさせたんです。


なるほど。ある意味では、新聞社が発行部数を維持しようとして偶然誕生したという見方もできそうですね。


神田

もっと言えば、そもそも「スポーツ」というコンセプトそのものもメディアとの関わりを抜きにして考えられないと思うんです。


どういうことでしょうか?


神田

「これはスポーツである」という言説が受け入れられれば、何でもスポーツとして捉えられるということです。


例えば、2010年に中国・広州で開催された第16回アジア大会では、囲碁が正式種目として採用され、日本からは井山裕太九段が出場しました。
また、最近ではコンピュータゲームの大会がeスポーツとして人気を博していますよね。


「スポーツ」というコンセプトそのものが非常にフレキシブルで、メディアの言説との関わり合いによって絶えず動いているということですね。


ユニークな卒論。現地に足を運び、人に会って話を聞く。

ところで先生は、元々スポーツ記者をされていたそうですね。


神田

共同通信に25年間在籍し、主に運動記者として日本とアメリカで野球の取材をしてきました。


アメリカにも行かれてたんですね!


神田

元々日本のプロ野球はきわめてドメスティックな存在でしたから、海外で仕事をするチャンスが訪れようとは思ってもみませんでした。
ところが、1995年に野茂英雄選手がロサンゼルス・ドジャースに入団し、メジャーリーグに大旋風を巻き起こしたことで風向きは完全に変わりました。


先生も野茂を追って、アメリカに行かれたと。


神田

結局、2017年に共同通信を退職するまでに、2003年〜09年、11年〜15年の計10年間にわたり、ニューヨーク支局で記者やデスクの仕事をすることになりました。



アカデミックの世界への転身を決められたのは、なぜでしょうか。


神田

一つのテーマについてもっと時間をかけて研究したいという思いがあったからです。
また、私事になりますが、父が大学で物理学の教員をしていたので、仕事のイメージが掴みやすかったということもありますね。


メディア研究者をはじめとして、アカデミックな世界の人々との付き合いはとても新鮮で、いい刺激をもらっています。


マス・コミュニケーション学科では、どのような活動をされていますか?


神田

面白いところでいえば、スポーツニッポン新聞社さんの整理部の協力を得て、「スポーツ江戸川大学」(愛称「スポエド」)というスポーツ新聞を作って、オープンキャンパスの来訪者や各地の高校に配布しています。


それから、新聞社への就職を志望している学生も少なくないので、作文指導も行っています。
近年は地方新聞社から内定をもらった学生もいたんですよ。


オオッ!マスコミへの就職に憧れている人にとっては耳寄りな情報をいただきました。
ゼミでの卒論指導については如何でしょうか。


神田

「スポーツ・ジャーナリズム」の看板を掲げているので、文献研究にとどまらず、現場に足を運び、人に会って、直接話を聞くことを勧めています。


2019年度の卒論を例にとりますと、1970年代に世界トップレベルの成績を収めていた日本の女子バスケットボールに関する研究や、野球の金属バットと木製バットに関する研究など、とてもユニークなテーマに取り組む学生も少なくありません。


これらの卒論を書いた学生もインタビューに挑戦されたのでしょうか。


神田

もちろんです。前者の研究では、世界選手権で得点王に輝いたこともある今野(旧姓 生井)けい子さんに、後者の研究では明治大学や神戸製鋼の野球部の監督を務めた後、横浜ベイスターズやオリックスのスカウトとして活躍した荒井信久さんにインタビューをしていましたね。


私自身、身に沁みて感じることなのですが、学生が自分でインタビューを行うというのは、なかなか大変ではないでしょうか。


神田

アポイントなど取材の準備段階では色々とサポートしますよ。
もっとも、“道”はつくりますが、取材そのものは自分でやってもらいます。声が震えていようが、涙目になっていようが、話を聞きさえすれば取材は成り立ちますからね。


涙目になっていようが……。


神田

四半世紀以上、取材活動を続けている私だって、インタビューをするときは今でも緊張します。こうした経験を含めて、学生にはインタビューから何かを学んでほしいと思っているんです。


私も頑張れそうな気がしてきました!



「ごめんなさい」といえる“強さ”を


最後に、ゼミの学生に対して日頃から伝えているメッセージやアドバイスについて聞かせてください。


神田

誰にだって失敗はある。大切なのは失敗をしたときに、誤魔化したり隠したりすることなく、素直に謝る“強さ”を身につけることだということです。


その心は……?


神田

新聞の世界では、他社が新たな情報を先につかんで出し抜かれるということが、しばしば起こります。
場合によっては、猛烈な社内プレッシャーに晒されることもあるのですが、プレッシャーから逃れようとするあまり、誤った情報や写真を掲載してしまったら、不祥事につながってしまいます。
本人の記者生命も危うくなってしまうでしょう。


なるほど。


神田

ある意味で、不祥事を起こすのは“悪い人”ではなく“弱い人”なんです。


失敗をしたときにこそ、「ごめんなさい。できないものはできません」とはっきり言うことのできる“強さ”を持ってほしいと思っています。



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