矢谷浩司研究室

東京大学工学部電子情報工学科

インタビュー
2020.04.02

一番最初に失敗する集団!?人間とテクノロジーの新しい関係を追求する研究とは|東京大学矢谷浩司准教授インタビュー

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今回は東京大学工学部電子情報工学科の矢谷浩司准教授にお話を伺ってきました。


矢谷先生の研究室では、「インタラクティブ・インテリジェント・システム」の研究を行っており、テクノロジーをいかに社会実装するかということに焦点を当て、様々なプロジェクトを進めております。

企業との共同研究も多く、色々な分野で成果を上げられているとのことですが、それは一体どのようなものなのでしょうか。ちょっと覗いてみましょう。



一番最初に失敗する集団!?設計・実装・評価の徹底


まず、研究内容について聞かせてください。


矢谷

私たちのラボ「インタラクティブ・インテリジェント・システム ラボ(IIS Lab:イーズラボ)」は、技術とそれを活用する人間との新しい関係を追求しています。


インタラクティブ・インテリジェント・システム?


矢谷

ラボのミッションは、私たちが設計・実装・評価するインタラクティブ・システムにより、人間の知的活動や健康的な生活を支援して、人々の幸せにすることです。


もう少し詳しく教えていただけますか。


矢谷

このミッションの実現に向けて、単にモノをつくるのではなく、あるモノをいかなるユーザーに向けて、どのように設計・デザインするべきか。社会のニーズを調査し、テクノロジー・ブレイクスルーを実装する。


さらに、ユーザーに実際に使ってもらい、アンケート調査やインタビューなどにより評価する。ラボの研究プロジェクトでは、これら3つの段階を徹底しています。


なるほど。技術そのものを追求するのではなく、人間と技術の関係に焦点を当てるわけですね!
具体的には、どのような分野で研究を進めていらっしゃるのでしょう。


矢谷

具体的な成果については後ほどご紹介しますが、日常的な健康管理や知的生産性、アクセシビリティ、クリエイティビティのサポートなど、さまざまな分野で研究を進めています。
企業と共同研究を行うケースも少なくありません。


企業との共同研究もされているのですね。


矢谷

私たちはいわば「一番最初に失敗する集団」です。
誰がどうやっていいかわからないような課題に挑戦し、「これをやったら行けそうだ」「こうするとダメそうだ」といった知見を蓄積していく。
やり方のわからないことに挑戦するのが研究。それが僕らの仕事なんです。


「一番最初に失敗する」とは、それはまた大胆な……。
先生はもともと、基礎技術の研究というよりは、人間とモノ、技術の関わりに関心をお持ちだったのでしょうか。


矢谷

そうですね。学生時代から人間と技術の関わりに興味があって、「ヒューマン・コンピュータ・インタラクション」と呼ばれる分野の研究を行ってきました。
卒論では、博物館の展示物にRFID(非接触型のICチップ)を設置して、そこに近づくとPDA(携帯情報端末)にクイズが表示される仕組みをつくりました。
その仕掛けによって博物館に来られた方の展示の見方が変わったり、来られた方同士でのコミュニケーションが変わったりすることを見て、非常に面白いと感じたのが始まりです。


ユニークな研究成果


具体的な成果について聞かせてください。日常的な健康支援にはどのようなものがありますか。


矢谷

スマートフォンのロックを指紋認証で解除するたびに心拍の情報を取る仕組みや、歯ブラシにカメラとLEDライトを搭載し、歯垢を見える化し、磨き残しがないかどうかを確認する仕組みがあります。センサーをはじめとするテクノロジーを活用し、お医者さんにかかる前のサポートをする仕組みづくりを進めているんです。


次に「アクセシビリティ」の研究については如何でしょう。


矢谷

体が不自由なユーザーを助けるモバイル・ウェアラブルなシステムやアプリケーションに関する研究で、体が不自由な方が、みんなと同じように楽しいことができるようにするための仕組みづくりを進めています。


例えば、どのようなものが挙げられますか?


矢谷

視覚に不自由がある人のファッション活動に関する研究は、その一例です。
視覚に不自由がある人がアパレルショップに入った時に、店の全体像がつかめないことに不便を感じているという調査結果をもとに、位置認識とRFIDなどの技術を活用しながら商品情報を音声で案内するショッピング支援モバイルアプリを開発。日本橋高島屋様にもご協力いただき、実店舗での実証実験も行いました。


「知的生産性」を向上させるための研究には、どのようなものがありますか。


矢谷

ユーザーにとって面白くない仕事をコンピュータやAIにアウトソースすることで、本質的な仕事に集中できるようにするためのシステムの開発に力を入れています。


コーディングを支援するシステムや、プログラミングの授業と実践とのギャップを埋めるための仕組み、GitHub上でコードの開発履歴を抽出、表示する仕組み、ビジネス資料作成のための情報収集や管理を支援するシステムなどが挙げられます。


「クリエイティビティ」についてはいかがでしょう。


矢谷

コンピュータビジョンという画像認識技術を使って、グループダンスの練習時における身体の運動のズレを可視化する仕組みや、ギターのコード演奏練習を支援するシステム、エレキギターの演奏におけるミスを自動検出する仕組みの開発などを手掛けています。


人間とテクノロジーの関係に焦点を当てることで、既存技術を活用しながらユニークな成果を生み出すことができるということですね。


矢谷

そうですね。ほかにも最近の成果として、赤外線光によってアルコール濃度を測定し、濃度に応じて色が変わる氷型デバイスや、動画のダイジェストの視聴時間をユーザー側で自由に設定する「ElasticPlay」の研究があります。


本当にいろんな分野で成果を上げられているのですね!


矢谷

「ElasticPlay」は、電車に乗っていて「次の駅に着くまでにこの動画の概要を知りたい」といったニーズを叶える技術で、タイトルに含まれる単語などから重要なシーンを推定し、あるシーンを切り捨てたり、再生速度を高めるなどして、ユーザーが指定する時間にぴったりはまるハイライトを自動で生成する仕組みです。
どの研究でも、ユーザーの行動をしっかりと観察し、どうすれば使ってもらえるサービスを創れるかという点に力を入れています。


好きなことをとことん究めてほしい


研究室の特徴について聞かせてください。


矢谷

「IIS Lab」は、私とポスドク1人、博士課程の院生2人を含めた、およそ20人のメンバーです。
メンバーの半数は中国やアメリカ、フランスなど、世界各国からの留学生ですので、英語と日本語が飛び交っているような感じです。


ラボの雰囲気についてはいかがでしょうか。


矢谷

創設5年目の若いラボということもあり、フラットで伸び伸びとした雰囲気で、ワイワイガヤガヤやっています。
たこ焼きパーティをやったり、東京・秋葉原にあるモノづくりのためのコワーキングスペース「dmm.make」で異業種交流会を開催したりと、社内外でさまざまなアクティビティを開催しています。


伸び伸びと研究できるのは良いですね!
どのような方針で学生を指導されていますか。


矢谷

基本的には、ラボのメンバーそれぞれが、一つのプロジェクトを手掛けています。


プロジェクトの具体的な内容に関しては、学生さんがどのようなテーマに興味関心を持っているか。どのような知識を習得したいと考えているか。そして、いかなるキャリアプランを描いているかを聞き、一人ひとりに可能な限りマッチした内容を考えます。


大きなプロジェクトの一部としてではなく、自分のプロジェクトを担当するんですね!
将来のことまで考えられていて、学生にとってはとても良い経験になりそうです。


矢谷

新しいプロジェクトをゼロから一緒に考えるケースもあれば、私がもともと持っているアイデアを与えて、学生に膨らませてもらうケースもありますが、いずれにせよ、学生さんには言われたことをやるのではなく、自分がやりたいことを、覚悟をもって追求してもらいたい。


「私に言われたからやる」のであれば、うちのラボで研究する必要などありませんからね。
ある意味では、「学生」というより「同僚」という意識で接しています


好きなことをとことん追求する姿勢と同時に、研究に対する厳しさが求められるということですね。


矢谷

そうですね。研究というのは、世の中の誰も知らないこと、何が問題かすらわかっていないことを突き止めたり、創り上げたりしていくわけですから、そう簡単に進むはずがありません。
どういうことが難しいのか、なぜうまくいかないのか。その要因を把握するだけでも良い研究になりますし、次のステップにつなげることができます。
学生さんには卒論や修論を通じて、自分の好きなことをとことん追求してもらいたいと思っています。


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