「どの大学を出たか」よりも「どの研究室を出たか」の方が重要な理由
はじめに
皆さんは「どの大学を出たか」はどのくらい重要だと思いますか?
目的や立場によって異なるとは思いますが、良い大学を出ておいたほうが良いと考えるのが一般的ではないでしょうか。しかし、私はどの大学を出たかはあまり重要でないと思っています。正確には、より重要だと考えるべきものがあると思っています。
それは「どの研究室を出たか」です。
この記事では、なぜそのように考えるのか私自身の経験をもとに書いてみたいと思います。ちなみに「研究室」というと主に理系と呼ばれる学部学科をイメージされるかと思いますが、文系の場合は「ゼミ」に相当するものだとお考えください。
現状はどの大学を出たかが重要視されている?
まずはじめにどの大学を出たか、つまり「大学名」にまつわる現状を見てみましょう。
就職活動では、学歴フィルターというものが存在すると言われています。つまり、ある一定以上の偏差値の大学を出ていないとそもそも面接さえ受けることができないのです。もちろんそのような企業ばかりではありませんが、やはり大学名により選択肢が狭くなってしまうという現状があることは事実です。
一方で、学歴や大学名より人間力を重視するという傾向もあります。それはそれで辛いものがあるのではないでしょうか。なぜなら、勉強を頑張って良い大学に行けたとしても、人間力のせいで落とされてしまうことがあるからです。
人間力って一体何なんだろう……という話もありますがここでは置いておいて、どの大学を出たかというのは就職への影響が大きそうです。
また、メディアでは、やたら大学名を目にすることはありませんか?特にテレビのクイズ番組では、東大卒、京大卒のように大学名を強調することが多いように思います。属性として分かりやすいという面はありますが、あくまで属性の一つです。○○大を出ているから、その人がすごいというわけではありません。
このようにどうやら「大学名」はその人を判断する基準として用いられている現状があるようです。
3年間の「勉強」と1年間の「研究」の濃度
私自身、大学受験の際はできるだけ偏差値の高い大学へ行くという目標のもと勉強していました。数学や物理など理系科目が好きで、ぼんやりと興味のある分野はありましたが、やりたいことが明確にあるわけではなかったので偏差値を基準にしていたのです。受験のための勉強に何の意味があるのだろうと考えたりもしていましたが、それを考えることは逃げのような気がして、ある種の反骨精神みたいなものもありました。
その後、大学に入り様々な授業を受けるのですが、自分自身が何かを学んでいるという実感がありませんでした。単位もちゃんと取得できていたし、微分積分や線形代数、プログラミングなどの知識は得られたのですが、どこか虚しさがありました。単位を取るためにテスト前に出回っている過去問を暗記して乗り切るなんてことをしていると、受験のときと変わらないじゃん……と感じたのです。
そして、大学4年生のときの研究室配属が大きな転換点となりました。
「研究」を始めたことで、それまで学んできたことの意味がようやく分かったのです。抽象的すぎてよく分からなかった大学の数学はこんなに役に立つのか、と。同時に自分が何も分かっていなかったということも分かりました。ただ暗記して詰め込んだだけの知識は、ただの知識に過ぎなかった。これまでの価値観がガラッと変わるような体験だったのです。
入学してからの3年間と研究室配属してからの1年間の濃度が圧倒的に違いました。研究に本気で取り組むことで、単なる知識ではない、物事の見方・考え方などのより根本的なものが相当鍛えられました。そこで私は研究室の重要性を感じたのです。
研究室にも様々なスタイルがある
だからといって、どのような研究室でもこのような経験ができるとは限りません。研究室によってはテーマが与えられ、研究の本質を味わうことができないのです。もちろんそれが必ずしも悪いことだとは思いません。元々その研究テーマに興味があるのであれば、むしろその方が良いのかもしれません。
しかし、なんとなくの興味で研究室を選び、そこで与えられたテーマをこなすだけになってしまうと、これまでの勉強とそれほど変わらないものになってしまいます。それだと研究室で過ごした1年間、大学院の2年間でさえも大学の延長として過ごすことになるのではないでしょうか。私の周りでもそのような人は沢山います。
結局はミスマッチが起きているということです。なぜそのようなことが起きてしまうのでしょうか。それは先に述べたような研究室の重要性があまり認識されていないからだと私は考えています。
研究室の重要性
ここで注意しておきたいのが、どの研究室を出たがが重要であると言いたいわけではありません。つまり、有名な先生の研究室を出たからといって、その人がすごいわけではないということです。研究室名で人を判断するのであれば、大学名で人を判断することと変わらないでしょう。
強調したいのは、その人の属性ではなく中身で判断すべきだということ。そして、その中身を最も鍛えられるのは研究室だということです。だからこそ研究室選びが重要なのです。
Hey!Laboでは、様々な大学の先生方にお話を伺いインタビューを行っています。
大学名や肩書きからは見えない、先生方の"想い"を少しでも伝えられればと思い、日々あらゆる場所に足を運んでいます。
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