糖化学ノックイン

2021年度科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B)

インタビュー
2022.01.21

自分の強みを活かして化学的に新しいことの実現を!【ケムステ×Hey!Labo 糖化学ノックインインタビュー④】

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2021年度科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B)に採択された『糖鎖ケミカルノックインが拓く膜動態制御(略称:糖化学ノックイン)』について、研究チームのメンバーにお話を伺いました。


インタビュー第3回は、京都大学化学研究所物質創製化学研究系・助教の上田善弘先生のインタビューです!



糖鎖機能のオン/オフを「あやつる」


はじめに、ご自身の専門領域について聞かせてください。


上田

触媒反応の開発をしていて、化合物の中でも主にを扱っています。
糖は構造に水酸基がいっぱいあるのですが、その一つを狙って変換させる触媒反応の開発をしています。研究のモチベーションとしては、超酵素様反応ともいえる酵素でもできないような変換を開発してみたいということで研究を行っています。


酵素でもできないような変換!


上田

専門用語で難しいかもしれないですけど、酵素はいろんな選択性を制御しながら反応しています。


選択性?


上田

例としては、グルコース誘導体は水酸基が4つありますが、普通に反応させると制御が非常に困難で全部反応してしまう。僕の先生だった川端先生が開発した有機分子触媒は、決まった場所だけに反応を起こすことができるんです。
これを使って糖由来の有用化合物の全合成、つまり簡単な化合物からちょっと複雑な化合物をつくる研究をやっていました。


今回の領域ではどのような研究をされていますか。


上田

3つのグループのうち「あやつる」を担当しています。
糖鎖をタンパク質にくっつけると分子認識されてタンパク質の行き場所が決まるんじゃないかと考えていているのですが、ある部分だけを反応させておくと分子認識が起こらなくなる。そして、修飾が外れると糖鎖認識が起こってタンパク質が動いていくというようなプランを立てています。


タンパク質の動きをあやつるのですね!


上田

糖鎖には水酸基がたくさんあるのですが、選択的変換は現状ではほぼ不可能です。僕の役割としては、これまでやってきた触媒反応を活かして、糖鎖のある一部分だけを変換させて研究に用いることですね。
「つくる」グループが作った糖鎖に修飾を施して糖鎖機能のオン/オフを実現したいというイメージです。


ご自身のこれまでの研究と近いのでしょうか。


上田

そうですね。ただ糖鎖構造を識別して一個だけ水酸基を変換させることは、これまでやったことないので非常にチャレンジングです。方法論がないのでなかなか難しいと思います。



自分の強みを活かして化学的に新しいことを実現したい


反応化学と生命科学の異分野融合のテーマだと思いますが、その点についてどのように考えていますか。


上田

僕のバックグラウンドは化学ですが、今回のテーマは生命科学よりの研究ですね。化学的な観点から見て、生体内では「こんなこともできるのか!」という反応が多くあり、新しいチャレンジをしているような気持ちです。
生命科学の方と話すことで、今まで自分では考えてこなかった用途の反応開発が求められていることがわかり、そこにこれまでの強みが活かせるんじゃないかと思っています。


他分野の方と一緒にやっていくことで刺激などはありますか。


上田

多くありますね。今回のテーマ以外でも一緒にやれたらいいなというテーマも出てきていて楽しいです。


それは良いですね!
今回の領域への意気込みや思いについて聞かせてください。


上田

学生時代からずっと化学を研究してきたので、応用的な興味というより自分の強みを異分野で活かして化学的に新しいことを実現したいという思いが一番強いです。


新しい分野への挑戦になるかと思いますが、難しさなどは感じられますか。


上田

これまで生命科学の人とはあまりディスカッションをしたことがなく、使っている用語から分からないこともありました。分野が変わると考え方も用語も違うので最初は大変でしたね。
でも勉強していくと、自分の中に少しずつ知識が付いてきてディスカッションできるレベルになる。それだけでも研究が広がったなという実感があります。


打ち合わせはずっとオンラインでされていると聞いたのですが、研究自体は問題なく進められるのでしょうか。


上田

ディスカッションという意味では全く不便はないですね。物のやりとりも郵便で送ってしまえばいいので。
実際に実験している風景を見たりとか、実験技術を伝え合ったりっていうのはなかなか難しいかもしれない。


皆さんの研究がオンラインで繋がり、そこから新しいものが生まれるというのは新しい気がします!


上田

コロナ禍前からのことなので慣れてしまえばストレスはほとんどないです。
ただ一回どこかで会いたいなという話はずっとしていますが、なかなか会えない状況で一年が経ちました。(笑)



自分で面白さを発見することで熱中する


もともとご自身の研究分野に興味を持った背景や研究者になろうとしたきっかけについて聞かせて下さい。


上田

僕は漠然と薬を作りたいと思って薬学部に入りました。それで分子を作れないとどうにもならないかなという気持ちで、有機化学の研究室に入っていきました。


もともと化学に興味があったという感じではないんでしょうか。


上田

そうですね、すごく漠然としていました。
それで研究室に入ってドクターの先輩方や研究活動がとても刺激的でドクターに行ってみようという気持ちになりました。


研究室のときの経験が今に繋がるのですね!
最後になにか伝えたいメッセージなどを聞かせてください。


上田

学生には何かに熱中してみることをしてほしいなと思います。
元々これがやりたいと思ってなくても、真剣に取り組んでみると面白さが分かってくる。自分で面白さを発見したときが一番楽しいんじゃないかなと思います。


やりたいことが分からないという人も多いと思いますが、まずはやってみるということですね!


上田

たぶん僕もそういう感じで、自分であれこれやってみている内に面白さを発見していったような気がするので、そんなにやりたいこととか難しく考える必要はないと思いますね。時には流されてみてもいいんじゃないかなと思います。



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